2014

01/21

リワーク(return to work)って役に立つの?

  • メンタルヘルス

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西松 能子
立正大学心理学部教授・博士(医学)、大阪医科大学医学部卒業後、公徳会佐藤病院精神科医長、日本医科大学附属千葉北総病院神経科部長、コーネル大学医学部ウェストチェスター部門客員教授を経て現職日本総合病院精神科医学会評議員、日本サイコセラピー学会理事、日本カウンセリング学会理事、現在あいクリニック神田にて臨床を行う。

ドクターズプラザ2014年1月号掲載

よしこ先生のメンタルヘルス(22)

「ストレスを感じないように」ではなく「ストレスを感じた後の対処」が大事

地域社会の取り組み

現在のメンタルヘルスの現場では、「病院から地域へ」という流れは実際に現実のものとなり、精神科病院への新たな入院患者の80%以上が6カ月以内に退院するようになりました。地域に戻り、それぞれの生活を取り戻します。流れは促進され、さらに在宅で寛解を維持するのみならず、地域社会で生き生きと生活し、働くことが求められています。地域社会はそのために様々な仕組みを作り始めています。

地域障害者職業センターは障害を持つ人々の就労支援をする場所です。その中には精神障害者雇用支援センターがあり、うつ病などで休職し、職場復帰を考える場合にリワーク(return to work)支援のプログラムを行っている部門があります。実は、私はリワークという和製英語をいささか気に入っていません。というのは、英語のリワークの意味はリペアーの意味で、やり直しとか出来損ないを直すことを意味するからです。「return to workの意味の和製英語だ」と割り切ればいいのですが、いつもちょっと気になってしまいます。人が仕事をしなくなったからといって、出来損ないとかやり直しとか思いたくないですよね。「いつでもどこでも、仕事があろうとなかろうと私は私」と思っています。

こんな考えがあるので、つらいうつになってやっと回復してきた方々にリワークは本当に役に立つのだろうか、どのような点で役に立ち、どんなリワーク施設があるのだろうか、どんな形のリワーク施設が本当に役に立つのだろうか、と考え続けてきました。リワーク施設には様々な形態があり、それぞれ特徴があります。独立行政法人で行われているリワーク支援は、もともと特別支援学校の卒業生を対象とした就労支援から出発した施設や、統合失調症など重篤な精神疾患から回復した人たちを対象としたデイケアから出発した施設、最近ハローワークと協働して作られた施設など大きく3種類に分けられます。それぞれ特徴があり、前の二つは作業を中心としたリワーク支援をする傾向があります。

様々な形のリワーク支援

最近作られたリワーク支援は、実際の職場環境に似た作業室でパソコンを使った文章の入力や校正など、オフィスワークを中心としたリワーク支援を行っています。民間のリワーク支援を行う施設は診療所や病院が運営していることが多く、医療法上はデイケアとなります。ルーツは職域病院で休職中の従業員へのトレーニングでした。有名なプログラムは、教員の職域病院だった三楽病院の教員復帰プログラムや、逓信病院の職場復帰プログラムなどです。職域病院が一般に開放されるに従い、職域に特化したプログラムが汎化されていきました。また一方、平成15年には診療所が独自に復職支援プログラムをスタートさせました。この診療所のリワーク支援のモデルは、NTT東日本関東病院でした。

民間病院も従来の重篤な精神疾患から回復した人たちを対象としたデイケアを衣替えし、リワーク支援をするプログラムを行うようになりました。病院型リワーク支援の中には、プログラムの中に軽いスポーツや簡単な料理、ビーズつなぎのような手作業などが入り、朝はラジオ体操から始まる従来型のデイケアに近いリワークプログラムもあれば、実際に会社に出勤するような高度な作業を負荷するリワークプログラムもあり、千差万別です。

リワークプログラムと一言で言えないほど様々な形態のプログラムがあります。共通する点は、一定の時間に通院、通所するという生活リズムを作る場であること、共に復職をする仲間作りができることです。異なる点は、リワークプログラムを開始する時期を学校のように一定としているか否か、有料か無料か、プログラム内容(作業的か事務的か、認知療法やアサーショントレーニングなど心理的取り組みを重視しているか否か)など。見学をしたり、少し参加してみたりして自分に合う所を探してみましょう。

休職するときには、仕事の負担が大きかったり、仕事で失敗したり、様々な形で心に傷を負っています。復職は、初めて就職するときよりもさらに難しい場合がしばしばです。ストレスを感じないように、ではなく、ストレスを感じた後の対処が大事です。そういう意味では心理的取り組みを重視しているリワーク支援が効果的だと考えられます。生きていくときに転んだり、失敗したりしないことはあり得ません。どうやって立ち上がるかを学ぶことのできる場所を見つけましょう。