2017

05/15

スクールカウンセラーって、どんな人?

  • メンタルヘルス

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西松 能子
『よしこ先生のメンタルヘルス』
立正大学心理学部教授・博士(医学)、大阪医科大学医学部卒業。
公徳会佐藤病院精神科医長、日本医科大学附属千葉北総病院神経科部長、コーネル大学医学部ウェストチェスター部門客員教授を経て現職。日本総合病院精神科医学会評議員、日本サイコセラピー学会理事、日本カウンセリング学会理事、現在あいクリニック神田にて臨床を行う。

ドクターズプラザ2017年5月号掲載

よしこ先生のメンタルヘルス (43)

不登校を経験してもいずれ学校へ行けるように

満開の桜の花の下、新学期が始まりました。新しい学年が始まり、新しいクラスメートと出会いました。担任が代わった生徒も多いでしょう。あっという間に家庭訪問が始まり、5月の連休になりました。連休中の旅行では、仲良くなったお友達へのお土産を考えたりするかもしれません。

Aちゃんは、5月の連休には、家族でハワイに遊びに出掛けました。すっかり日に焼けて帰ってきたその日は、時差のせいか、なかなか寝付けませんでした。連休明けの月曜日に登校しようとしましたが、微熱と頭痛で登校できませんでした。かかりつけの小児科の先生は「旅行の疲れかな、風邪でも引いたのかなあ」と首を傾げ、お薬を飲んでみるように言いました。熱は下がりましたが、いざ学校に行こうとすると、お母さんに「頭が痛い、気持ちが悪い」などと訴え、学校へ行けません。担任の先生が「学校へおいで、待っているよ」と電話してきました。「ありがとうございます、行きます」と答えるものの、結局登校できない日が続き、6月になりました。担任の先生は「Aちゃんは学校に来られないみたいですね。お母さんだけでもスクールカウンセラーに会ったらどうですか」とお母さんを誘いました。

Aちゃんのお母さんは、スクールカウンセラーに会う予約をしました。小児科の先生も今では「どうやら体じゃなく、心の問題だね」と言い、ぜひスクールカウンセラーに会うように勧めました。Aちゃんの代わりにと思い、お母さんはスクールカウンセラーに会いました。Aちゃんが学校に行けなくなってから、「自分のせい」のように落ち込んでいたお母さんは、スクールカウンセラーに会って自分が救われたように感じました。スクールカウンセラーから「学校に行けない時期のあった人は数%もいること、不登校があった子どもたちの85%は望んでいた水準の教育を修了し、社会適応では一般人口に差がないこと」を聞き、ホッとしました。お母さんは今までのようにつらそうではなくなりました。Aちゃんにも「大丈夫。気にしないでも、そのうち行けるようになるんだって」と伝えました。

Aちゃんは7月になると、修了式には出てみようかな、と言い出しました。お母さんは、「無理しなくてもいいよ。その前にスクールカウンセラーに会いに行ったら」と勧めました。Aちゃんは、皆が授業に出ている10時ごろに学校に行って、スクールカウンセラーに会うことにしました。スクールカウンセラーは、ハワイの写真を用意して待っていてくれました。Aちゃんは、ハワイ旅行で友達へのお土産を忘れたことを、初めて伝えることができました。

子ども、父兄、教員への心のサポートを担う

今ではスクールカウンセラーという名称は、すっかりなじみの職種となりました。文部科学省が1995年に「スクールカウンセリング事業」を開始して以来、現在は全ての国公立の中学校にはスクールカウンセラーが配置されています。小学校、高校にもずいぶんと配置されるようになってきました。私立学校においても私学助成金をもとに、多くの学校で配置されるようになりつつあります。

スクールカウンセラーは、子どもや教育現場での問題を専門とする臨床心理士によって担われています。児童精神科医や児童や教育の問題を専門とする大学の先生もなることができます。直接教育を行わない先生で、児童・生徒の心の問題に関わるのが仕事です。もちろん、保護者への助言や援助、先生方への助言や援助もします。

実際の運用は、文科省の予算措置となるので難しいところがあります。具体的には、国公立学校のスクールカウンセラーは非常勤特別職という公務員で、週4時間から8時間程度の時間内で、必要とする子どもの相談や父兄・教員への相談の全てを行うことになります。教育委員会の配置ですから、所属している学校の校長先生の指示からは独立しているのですが、実際には1年任期で再任には所属している学校長による推薦が必要で、立ち位置は難しい立場です。スクールカウンセラーは、子どもの心のエキスパートという立場ですが、大人の人間関係のエキスパートでないと勤まらない職業ですね。