2013

05/24

ゴールデンウィーク明けに

  • メンタルヘルス

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西松 能子
立正大学心理学部教授・博士(医学)、大阪医科大学医学部卒業後、公徳会佐藤病院精神科医長、日本医科大学附属千葉北総病院神経科部長、コーネル大学医学部ウェストチェスター部門客員教授を経て現職日本総合病院精神科医学会評議員、日本サイコセラピー学会理事、日本カウンセリング学会理事、現在あいクリニック神田にて臨床を行う。

ドクターズプラザ2013年5月号掲載

よしこ先生のメンタルヘルス(14)

先輩に会社への不満を聴いてもらうだけで、楽になることも

5月病と呼ばれる人たち

1カ月もたつと、4月に入社したフレッシュマンたちも、すっかりいっぱしの会社員のように見えるようになりました。学生だった頃とは違い、始業時間の遅くとも15分前には出社しているようです。先輩の叱責にもめげた様子も見せません。同期入社の人たちと昼食に出る様子も、物慣れてきました。ぼつぼつ残業も入り始めました。初めての長い休みになるゴールデンウィークに何をしようか、など話も出て楽しそうです。

今年のゴールデンウィークは、4月の27日から5月の6日までの10日間に及ぶ長い休暇でした。ゴールデンウィーク明けに同期8人の中で、1人がぽつぽつと休むようになりました。熱が出た、風邪を引いた、体調が悪い、などとその時々で理由は異なるのですが、いわゆる不定愁訴のような理由で休むようになりました。4月には「この会社に入りたかった」「会社のポリシーに感動しています」などと話し、元気いっぱいだったあの人です。頭が痛い、風邪気味だなどと休むことが増えてきました。心配したグループリーダーが飲みに誘うと、あまり気乗りしない様子でついてきました。「休みが少し多くなっていないか? どうしたんだ?」と尋ねると、屈託した様子で「とにかくだるいんです。前の晩は入った頃のように元気に行けそうな気がするんですけど、朝になるとだるくて、熱を測ると熱が出ていたり、咳が止まらなかったりするんです」と言います。「病院には行ったのか?」と尋ねると、「行きましたけど、風邪と言われました。でも、しばらくするとまた同じようなので、この頃は病院にも行きません」と言います。問わず語りに、あんなに厳しい就活をして、自分は何をやっているんだろうって思うんですよ、何だか空しくて何やっても意味ないような気がするんですよ、などと虚無的なことを言い出します。勧めても、お酒も焼き鳥もあまり口にしません。食欲もない、夢ばかり見て寝た気もしない、などと言います。

不眠、食欲不振、全身倦怠感、億劫感、虚無感など、抑うつ状態を示し、5月の連休明け頃から職場や学校に行けなくなる一群の人々がいます。このような人たちを「5月病」などということがあります。5月病と呼ばれる人たちの中には、適応障害、うつ病、身体表現性障害など抑うつを前景とする様々な精神疾患が含まれます。共通して言えるのは、負荷の強い受験や就活を乗り越えて望みを達成した後にやる気を失ってしまった状態ということです。

話を聴いてもらっただけで感覚的、感情的な失望が改善

このような後輩に遭った時、先輩として、上司として、どのようなことができるでしょうか。まずはどんなことが心の中で起こっているのか聴いてみましょう。聴き方にはコツがあります。
一つは、とにかく批判をしないことです。休んでいるのですから、ちょっとした言葉でも責められたと感じてしまいます。会社の論理で説得しても、傷つきが深くなるだけです。もう一つは、何か意見を言う時に「私は○○と思う」などと主語を付けることです。少し日本語的ではありませんが、そうすると、私以外はそうではないかもしれないというニュアンスが伝わります。

心の中の出来事を聴くことができたら、対策を考えましょう。明らかにメンタルヘルスに関わるような病気 ──このところ体重が減っている、2日以上続けて眠れていない、話の内容が現実離れをしていたり、ひどく落ち込んだりしている、死にたいと言っている、など── の場合は、受診を勧めてみましょう。すぐにメンタルヘルスの専門科を勧める必要はないかもしれません。

現在では、プライマリケア医や総合診療科で初診を受けると、専門医に紹介してくれることもしばしばです。また、話を聴いてもらっただけで感覚的、感情的な失望が改善することもあります。「そりゃあお前、会社に期待しすぎだよ。お前と会社は対等な契約関係だからな」などと言われただけで、少し肩の力が抜ける場合もあるでしょう。先輩に会社への不平を一方的に聴いてもらっただけで、ちょっと楽になることもあるでしょう。初期の怠業の中には、状況を客観的に捉えられるだけで改善するものもあるといいます。仲間同士の助け合い(ピア・カウンセリング)が役に立ちますように。