2023

01/25

コロナ禍で保健室は何をしてきたか

  • 保健

齋藤 朱美
東京都立深川高等学校

保健室ってどんな場所(3)

1. 一人勤務の養護教諭

2021年9月、2学期開始とともに保健室内をゾーニングしました。新型コロナウイルスがデルタ株に置き換わった頃、これまで体調不良者は休養させずに帰宅してもらっていましたが、学校生活が通常に戻りつつあるのと同時に保健室を利用する生徒も増えたためです。「内科的症状の人の入り口」「ケガや相談の人の入口」と掲示し、室内を半分に分け、入口の床には一旦停止の足形を置き、用件を聞き、入室させました。保護者の迎えがあるまでの待機室も隣に整えました。幸い、本校の保健室は広く、扉が3つあるため、ゾーニングできましたが、狭く、入口も1カ所のみの保健室では難しく、どの学校にも十分な広さや設備の整った保健室が望まれます。

2021年12月、初めて全国の感染者が10万人を超えました。多くの学校で一人の養護教諭は、他の養護教諭がどう対応しているのか知りたい思いがありましたが、出張などの参集は止められていました。この年、地区の委員をしていたこともあり、自分が動かないと情報共有の機会を失ってしまう焦燥感から、慣れないIT機器と格闘し、教わりながら、各校の執務机の養護教諭を繋げ、オンライン会議をしました。また、自分がその立場だったら不安でやりきれないと思い、その年に採用された若い養護教諭とは、できるだけ電話やメールのやり取りをし、心理的にもサポートをしました。

2. 濃厚接触者の特定が保健所から学校へ

2022年1月、3学期が始まり、より感染力の強いオミクロン株が拡大しはじめ、濃厚接触者の自宅待機期間が10日から7日短縮され、濃厚接触者の特定が保健所から学校に変わりました。陽性者からの聞き取りを学校(担任)がしなければならず、保護者からの電話を直接受ける担任へ、濃厚接触者の定義と待機期間の数え方の図表を作成し、配りました。他にも発熱相談センターや困りごとの相談できる電話番号についても、その都度、目まぐるしく変わる新しい情報と共に掲示しました。「濃厚接触者だが、保健所も病院も電話が繋がらない」との保護者からの相談や「家族が陽性になったが、自分はいつ、どうなったら登校していいの?」という生徒からの問い合わせの電話が鳴り止みませんでした。

ウイルスとの闘いではなく、感染対策として出された規定を守る(守らせる)ことや、こう書かれてあるけど現実的には難しいことを、どう折り合いを付けて、うちの学校として、どう決断するかとの闘いだったように思います。他校の養護教諭からは「管理職がリーダーシップを発揮し、校内で統率が取れた」と聞く一方、「教職員の感染予防に対する温度差があり、統一が難しい」「感染対策のため物品購入や消毒といった作業が養護教諭に任せきりになる」といった相談もありました。

また、抗原検査やPCR検査キットが学校に配られました。学校は検査をする場にはそぐわないといえます。特に抗原検査については、校内で鼻腔の奥へ綿棒を入れる行為は飛沫を拡散させる恐れがあり、ノウハウのない人が検査することは避けるべきだと考えます。

3. マイナスに見える状況でも、プラスの面を見つける力

2022年3月、急遽取りやめになった行事もあり「行事が無くなって、つまんない」と口にし、思い出を作る機会を奪われどこにも発散できない生徒の悔しい想いに胸が痛みましたが、心理的な不調やグチ、思ったことを自由に言っても許される保健室の存在は大きかったと思います。

養護教諭は感染予防のみならず、生徒の成長や発達を支える教育的側面の役割もあります。校内に漂っていた暗いムードを払拭したく、生徒らに注意喚起の放送を任せてみました。教員だと決まりきった手洗いや黙食を言うだけでしたが、「新型コロナウイルスが蔓延してから2年が経ちました。ワンピースで言ったら、なんと! 麦わらの一味が修行を終え、シャボンティ諸島で再会していますよ!(省略)まだまだ油断できません。人気のカフェやショッピングモールに寄らないで帰りましょう」とグッと心をつかむ導入で、思わずクスッとなるアナウンスでした。

その後、保健委員が中心となり、コロナ禍だったからこそ感じた気づきや、一人一人の小さな喜びや癒しを集めることにしました。漢字1文字とその理由を書いてもらい展示しました。その一部を紹介して終わりにします。

「友」コロナ禍で入学したので、文化祭や体育祭、修学旅行などの行事ができませんでした。でも、毎日の友達との会話が楽しかったので、これからも楽しみたいです!

「音」気分が下がったり、悲しいことがあったりした時にピアノを弾いたり、音楽を聴いたり、作ったりして音楽に支えられました。皆さんも音に触れてみたらどうでしょう。

「鍛」肉体と精神を強くするために鍛え始めて数カ月がたった。自分とは何かを考えた時にこの文字が浮かびました。ちなみに私は上腕二頭筋が好きです。

スキルラダー研究会の概要

ウェブサイト https://skill-ladder.com/

・団体名:SLIPER(すりっぱ)

Skill Ladder for Improvement and Evaluation Running of School Health Nursing

・理念:養護教諭の能力育成を追及すると同時に、子どもやその家族、さらにその地域で暮らす人々の健康に貢献すること

・メンバー:

荒木田美香子 [ 川崎市立看護短期大学 ]

内山 有子   [ 東洋大学]

加藤 恵美 [ 静岡市立清水船越小学校 ]

齋藤 朱美 [ 東京都立深川高等学校]

芝 裕介 [ 宮崎県立日南くろしお支援学校 ]

高橋 佐和子 [ 神奈川県立保健福祉大学 ]

中村 富美子 [ 静岡県沼津市立大岡中学校 ]