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コロナ後の地方医療サービスを見つめる

地域医療

北海道

横 山 和 之
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院 外科部長

ドクターズプラザ2020年9月号

地域医療・北海道(39)

3密が必須の業務形態

今回のコロナ禍では、ホストクラブ、スナック、キャバクラなど、接客を伴う夜の飲食業、昼間のスナックを利用した高齢者のカラオケなどでクラスターが発生し、いろいろな対策が取られています。これらの業種では、狭い空間にたくさんの客を入れ、時間当たりの客の回転を上げることにより利益を大きくする業態です。つまり、利益を生むためには3密の状態が必須であり、3密を回避しようとすると、業態そのものが成り立たないことになります。つまり、コロナ後の感染予防を念頭に置いた業務形態として3密を避けるような業務形態にすると、広い空間で、少ない客で、時間当たりの客の回転が下がることになります。小売業の大手であるスーパーマーケットでは、客が少なくなっても、1週間分の買い物をしてくれる、つまり、一回の購入額が増えるので問題ありません。しかし、通常の飲食業では、客が来る回数が減ったとしても、客一人の単価は上がるわけではなく、収益が著しく低下します。

今、地方病院の外来で起きていること

では、病院の外来診療はどうでしょうか。病院の外来での収入は、外来患者単価と外来患者の人数に依存します。コロナ前の外来では、待合室にたくさんの患者を集め3分診療で患者を診て、時間当たりの患者の回転を上げることで外来収入が維持されていました。3密をつくることで病院の外来診療は成り立っているんです。クリニックならなおさらそうです。そして、それを基本に診療報酬は作られています。コロナ後の現在の当院の外来は、(他の病院も同じだとは思いますが)患者は3密を避けて受診抑制がかかり病院に来ない、月1回の通院を3カ月に 1回に伸ばして来院する回数を減らすなどしています。しかし、今の診療報酬では、月1回の受診を3カ月に1回にしても病院に3倍の診療報酬は入りません。客単価が上がらずに客(患者)数は減るという、現在の困窮している飲食店と同じことが起きています。この流れはしばらく続くと思われ、外来患者数に頼る外来診療をこのまま続ければ地方病院は経営が成り立たず、閉院する病院 も多くなると考えられます。

従来の病院経営モデルは破綻!?

病院やクリニックの中にたくさんの患者さんを入れ、限られた外来診療の時間で患者さんをたくさん診て、それにより外来収入を得る、という現在の病院やクリニックの業務形態は、コロナ禍により継続することが不可能な業務形態となりました。医療という業種は他の業種より感染対策は万全にしなければならないという前提が当然ながらあります。コロナ後の病院やクリニックで3密はあり得ません。感染対策をしっかり行い病院やクリニックの外来診療で3密を完全に回避することは、患者さんを限られた空間と限られた時間にたくさん押し込んで収入を得るという従来の病院経営のモデルとは真逆のものです。つまり、コロナ後には従来の病院経営のモデルは既に破綻することが運命付けられており、従来の経営モデルのまま運営している病院やクリニックは近い将来、確実に経営破綻するということです。コロナの患者さんが増えることによる急速な医療崩壊も問題ですが、このままだと多くの病院やクリニックが経営破綻をし、ゆっくりとした医療崩壊が起きることが十分に予想されます。病院クリニックは自らの経営モデルを変化させなければなりません。

待っている医療から、個別に届ける医療へ

飲食業ではデリバリー強化の方向性が出てきています。医療という業種ではどうでしょうか。医療のデリバリーはもともと存在するんです。そう、訪問看護、訪問栄養指導、訪問リハビリ、訪問診療などです。地方病院では受診抑制のために外来患者が少なくなり、その分、外来では医療資源がだぶついています。その医療資源を外に向けるのは経営モデルとしては簡単に変えられる部分だと思います。余裕の出てきた医療資源を外に向けることは、従来の病院で患者を待っている医療から、医療サービスを個別に届ける医療への変化です。地方の医療の中心を届ける医療へ変化させれば、経営破綻は免れると思います。

ドクターズプラザ2020年9月号

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