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コロナ対策と水際措置

医療法

竹内 千佳
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。
医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。
ドクターズプラザ2021年9月号掲載

医療法(16)「諸外国の動向を踏まえて①」

はじめに

EUは、2021年6月3日の理事会において、入域制限解除国リストを改定する勧告を採択しました。
これにより、日本は2021年1月27日付理事会勧告で対象国リスト(いわゆるホワイトリスト)から除外されて以来、およそ4カ月ぶりに対象国となりました(表1)。EUでは、ワクチン接種完了者に対する不要不急の入域制限を原則撤廃していますが、対象国からの入域は、ワクチン接種の有無にかかわらず認められることとなります。ただし、入域の条件として、PCR検査の陰性結果証明の提出や渡航者位置特定フォームの提出が義務化されています。さらに、入域者に14日間の自主隔離の実施や、接触者追跡、追加検査の実施の要請ができます。

EUのワクチン接種証明書

EUでは、7月1日より、地域内の移動について「EUデジタルCOVID証明書」を活用し、保持者に対する制限措置や自主隔離の免除を行います。証明書は、デジタル版と紙版を併用し、当初欧州委員会が提案していた「デジタル・グリーン証明書」を「EUデジタルCOVID証明書」へ改めました。関連規則の適用期間は1年で、時限的な規則であることを明示しています。当該証明書は渡航の前提条件ではなく、あくまでコロナ禍におけるEU市民の域内移動を容易にする措置です。また、ワクチンについては、欧州医薬品庁(EMA)が承認したワクチン以外に、加盟国が独自に承認したワクチンなどを認めるかについては、各加盟国の判断に委ねることとしています。

わが国の対策

日本では、2021年1月13日から原則として全ての外国人の入国を禁止し、日本人や在住外国人の帰国は制限がされています。現在行われている水際措置は、表2の通りです。なお、一定の変異株流行国・地域から帰国した場合には、3〜10日間の隔離措置が行われることがあります。例えば、インドからの帰国の場合には、入国日の翌日から10日間検疫所長の指定する宿泊施設で待機し、3日目、6日目および10日目にPCR検査を受けて陰性となれば出所し、その後自宅などで入国後14日間は待機しなければなりません(2021年6月29日現在)。このように、わが国では、依然として厳しい入国制限が続けられています。そのような中、わが国でもワクチン接種証明書の発行が発表されました。接種証明書は、市町村長が、市町村で実施されたワクチン接種記録などを接種者からの申請に基づいて交付します。7月中旬から紙による申請と交付を行い、今後は2次元バーコードの発行やデジタル証明書アプリと連携し並行して運用するとされています。

おわりに

現在、変異株の流行が懸念される一方、ワクチン接種の有効性に期待した水際対策の緩和が行われつつあります。withコロナの時代において、感染をできるだけ抑えつつ、有効な経済社会活動ができるか、各国の政策が問われています。EUのワクチン接種証明書はあくまで時限的な規定であることが明記されていますが、今後の状況次第では継続することが想定されます。また、わが国の接種証明書については、国内の移動制限などにつながるものとはされていませんが、海外の渡航制限条件に利用される可能性は大いにあり得ます。ワクチン接種証明書を行動の必要条件とすることは、社会の分断につながる懸念があるため、その活用には慎重な判断が求められるでしょう。

ドクターズプラザ2021年9月号掲載

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