2014

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インフルエンザ

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2014年11月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(28)

ワクチンによる予防が大切

予防接種と薬

Q1 インフルエンザの季節になりますが、予防接種はした方が良いですか? 予防の薬があると聞いたので、それを服用していればいいと思うのですが。

A1

インフルエンザは急な38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに加えて、咽頭痛、鼻汁、咳などの症状も見られます。感染力が強く、短期間に膨大な数の人を巻き込むという点で普通のかぜとは異なります。乳幼児や高齢者、基礎疾患をもつ人では、肺炎などを併発したり、基礎疾患の悪化を招いたりして、死に至ることもあります。また、小児ではインフルエンザ脳症という重篤な神経症状を起こすこともあり、事前に予防しておくことが大切なのです。

インフルエンザの予防に効果があると承認されている薬には、オセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(商品名:リレンザ)、アマンタジン(商品名:シンメトレル等)がありますが、予防接種にとって代わるものではありません。オセタミビル、ザナミビルの予防適応は、原則としてインフルエンザを発症している患者の同居家族又は共同生活者である者のうち、65歳以上の高齢者、慢性心疾患患者、糖尿病等の代謝性疾患患者、腎機能障害患者に限られており、保険の適応は無く自費診療となります。また薬による予防効果は薬を服用している期間しかありません。それに対してワクチン接種による有効な免疫レベルの持続期間はおよそ5カ月となっています。

インフルエンザの流行株は毎年変化するので、流行が予測される型のワクチン接種を毎年受けることが必要です。10月を過ぎたらインフルエンザワクチンの接種をするようにするとよいでしょう。たとえインフルエンザに感染しても、症状が軽く済みます。インフルエンザはウィルスを含む飛沫が口や鼻から体内に取り込まれることによって感染しますので、マスクや手洗いで予防することも大切です。

抗生物質の効果は!?

Q2 インフルエンザは普通の抗生物質で効果はないのですか?

A2

そもそもウィルスと細菌との違いは、細菌は自分自身で細胞分裂して増殖できるのに対して、ウィルスは自分自身では増殖は出来ずに他の生物に寄生して増殖するところにあります。ウィルスは宿主となった細胞内に遺伝情報を放出して、ウィルスを複製できるようにプログラミングするのです。インフルエンザも、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大します。

抗生物質は細菌が自ら増殖するときの細胞壁やタンパク質を合成するのを阻害して細菌を死滅させる効果がありますので、ウィルスのように細胞壁を持たず、自ら増殖する為のタンパク合成もできないものには効果がありません。ですから、インフルエンザは風邪のときに服用するような抗生物質では治らないのです。また、インフルエンザと相性の悪い解熱剤もありますので、急な高熱や関節の痛みなどの症状があるときには、早めに医師に受診しましょう。

エボラ出血熱とインフルエンザ

Q3 エボラ出血熱にインフルエンザの薬に効果があると聞いたのですが?

A3

エボラ出血熱に効果があるとされている薬は、ファビピラビル(商品名:アビガン)というインフルエンザの薬です。

現在インフルエンザに使用されている薬は細胞内で増殖したウィルスが細胞外に放出されるのを抑制します。つまりウィルスを細胞内に閉じ込める薬なのでウィルスが増殖してしまってからでは効果がなく、発症後48時間以内に服用となっています。一方で、ファビピラビルは細胞内でのウイルスの遺伝子複製の際に重要な酵素を阻害することでウイルスの増殖を抑制する新しいメカニズムの薬で、ウィルスが増殖してからでも効果があります。

エボラウイルスとインフルエンザウイルスが共に性質も似ていることから、ファビピラビルがエボラ出血熱にも効果があると考えられています。ファビピラビルは、最近のインフルエンザを取り巻く現状をふまえ、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、他の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分である場合に備え、世界に先駆けて国内で承認となりました。本剤を使用が必要であると国が判断した場合に、患者への投与が検討される医薬品で、直ちに医療用として販売するものではなく、厚生労働大臣から要請を受けて製造・供給等を行われる特別な薬です。

 

 

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