2019

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アルコールと薬の相互作用

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2013年7月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(16)

服用時間の見直しについて、薬剤師に相談を

はじめに

薬とお酒を同時に服用することは非常に危険ですが、酒は百薬の長ともいわれ、楽しみたい時もあると思います。アルコールとの併用が何故いけないのか、理解してみましょう。アルコールと薬の相互作用は、大きく分けて以下の3種類があります。

1.アルコールの作用と薬の作用が、相加、相互的に高まる。
2.アルコールを代謝する酵素を、薬が阻害する。
3.アルコールを代謝する酵素と、同じ酵素で代謝される薬の効果が影響を受ける。

お酒を飲んだ時に睡眠導入剤を服用しても大丈夫?

Q1 寝付けないことが多く、睡眠導入剤を服用しています。お酒は飲まないように言われましたが、お酒を飲んだときには、絶対に薬を服用してはいけないですか?

A1

アルコールと睡眠導入剤や安定剤との併用は、アルコールの中枢抑制作用によって、薬の効果が増強されるという、相互作用の中でも危険な組み合わせです。昏睡状態に陥ることもありますので絶対に避けてください。睡眠導入剤や安定剤を常用している方は基本的に禁酒が必要です。もし、お酒を飲んだ時は、薬の服用は諦めてください。

アルコールと薬の作用が相加、相互的に高まる例として、他には消炎鎮痛剤があります。アルコールも消炎鎮痛剤も胃や腸の粘膜を刺激しますので、胃腸障害が発生しやすくなります。ひどい時には胃腸管での出血を起こすこともあります。消炎鎮痛剤は、総合感冒薬にも含まれていますので注意してください。降圧剤もアルコールの血管拡張作用によって、血圧低下作用が増強し、立ちくらみやめまいを起こるなどの注意が必要な例の一つです。

晩酌後の服用は?

Q2 毎晩晩酌をしますが、夕食後の薬は服用しても良いですか?

A2

アルコールはアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに代謝され、アセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸となり、血液にのってさらに分解されて最終的に炭酸ガスと水になります。これらの酵素を阻害する薬とアルコールを併用した場合には、アルコールやアセトアルデヒドの血中濃度が高まり、悪酔いした時や二日酔いと同じような頭痛や吐き気、動悸や血圧低下などの症状が起こります。セフェム系の抗生物質や一部の胃薬に、この相互作用が起きます。このような薬を服用するような場合の多くは、体調を崩していることが多いと思いますので、晩酌もお休みしたほうが良いでしょう。また、飲酒時にアルコールを代謝する為の酵素が体内で誘導されることにより、同じ酵素で代謝される薬の方が影響を受けることがあります。つまり薬が早く代謝されて効きにくくなったり、逆に長時間代謝されずに血中濃度が高いままになり、効果が強く出ることがあるということです。ワーフアリンやジゴシン、不整脈の薬は特に注意が必要です。

アルコールは他の食品とは異なり、消化を受けることなく胃や腸から吸収されます。吸収は全般的に早く、30分から2時間ほどで血中濃度は最高となり、その後直線的に下がってゆきます。適量でしたら危険性は少ないですが、時間をずらして服用してください。また、酔った状態での服用はやめましょう。1日1回服用する薬の場合には服用時間を朝に変更出来ないか、薬剤師に相談してみましょう。

長期飲酒と薬の効果

Q3 お酒を飲んでいる人は、薬が効きにくいと聞きました。本当ですか?

A3

長期飲酒を続けている方では、アルコールを代謝するための酵素、ミクロゾームエタノール酸化酵素の誘導が常に行われています。アルコールも薬も代謝する酵素系で、お酒を飲むことで活性が高まり、アルコールに強くなるのと同時に薬に対する耐性も上がるため、飲酒をしていない時でも薬が代謝されやすくなります。すなわち薬が効きにくくなるということです。ミクロゾームエタノール酸化酵素はお酒をやめて1~2週間で活性が低下してくるといわれています。健康の為にも、薬が本来の効果を発揮出来るようにするためにも、一定期間飲酒を控えて禁酒日を作ることが必要です。

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