2016

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アトピー性皮膚炎と薬の使用

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2016年11月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(40)

しっかりとしたスキンケアで冬の乾燥しがちなお肌を守る

塗布量を見直す

Q1 ステロイド軟膏を塗るとよくなりますが、やめるとすぐに悪化します。皮膚が黒くならないか心配です。ずっと使い続けなければいけませんか?

A1

アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、慢性的に続く病気です。湿疹や炎症がみられる間はステロイド剤の使用を続け、症状が改善してきたら使用する回数を減らしたり、保湿剤を用いたスキンケアに変更しながら治療を続ける必要があります。皮膚にはバリア機能があり、角質層が体内からの水分が出てゆくのを防ぐとともに、外的刺激から体を守っています。乾燥や、痒みによって掻き壊してしまうと皮膚のバリア機能が失われてしまい、少しの刺激でさらに痒みが生じるという悪循環が生じます。ステロイド剤が処方されている間は自己判断で中止せずに、しっかりと継続するようにしてください。

この時に注意したいのが、軟膏の塗布量で、FTU(finger-tip unit)という概念がガイドライン上でも目安として示されています。直径5㎜の太さで人差し指の先端から第1関節部までチューブから押し出した量(約0.5g)が、成人の手の平で2枚分の範囲を塗るのに適した量だということです。ローション剤の場合には一円玉大の量が相当量となります。症状が治まらない時には塗る量を見直してみてください。

なお、ステロイド軟膏によって皮膚が黒くなることはありません。皮膚が黒くなるのはアトピーの治療が不十分で治りきらずに色素沈着してしまうからです。アトピー性皮膚炎は、体質と環境的な原因が加わって起こるといわれていますが、実際の発病や悪化の要因は人によってさまざまで、ストレスなどの影響もあります。完全に治す方法はありませんが、スキンケアを行い、皮膚を乾燥から守って良い状態を維持するのが最善だと思います。特に冬は乾燥しやすい状態にありますので、スキンケアを十分に行う必要があります。入浴で汚れを落とした後、しっかり保湿しましょう。

使用部位や季節に合わせる

Q2 塗り薬には、軟膏剤やクリーム剤、ローション剤がありますが、どのように使い分ければいいですか?

A2

塗り薬に様々な剤形があるのは、ひとつには使用する部位によって使い分けるという目的があります。例えば、頭皮に軟膏を塗るのはベタベタしてしまいますし、頭髪もあって塗りにくいですが、ローション剤なら振り掛けるようにして塗ることができ、使いやすいですね。次に使用感の問題です。暑い時期には軟膏よりもクリームやローションの方がサラッとしていますし、冬には軟膏の方が保湿力があって使用感が良いと思われます。このように、部位や季節によって使い分けるのが一般的です。

さらに、添加物の問題があります。塗り薬は薬効のある医薬品「主薬」とそれを溶かしたり分散させて使用しやすくする「基剤」によって作られています。軟膏はワセリンやミツロウなど、水に溶けにくい脂溶性の基剤を使用しています。基剤が脂溶性成分のみの場合には、微生物も繁殖しにくくpHの影響も受けにくいので添加剤は必要ありません。それに対してクリーム剤やローション剤は基剤に脂溶性成分と水溶性成分が混ざっており、そのままでは分離してしまうので、界面活性剤や乳化剤などの添加剤を使用しています。そのため、一般的に軟膏剤の方が刺激が少なく、アトピーの方のように皮膚のバリア機能が低下した患者さんの場合には、主薬の経皮吸収性が高まりますので、全身性の副作用が心配される薬剤では軟膏の方が適していると思われます。しかし、それだけでどちらの薬剤を使用するか選択することは難しく、医師や薬剤師に相談するのが良いと思います。