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むずむず脚症候群(restless legs syndrome/RLS)~患者数は200万人から400万人~

インタビュー

「むずむず脚症候群」という病気をご存じだろうか。現在、日本国内には、軽症の人を入れると200万人から400万人の患者がいるという。「虫がはっているようだ」、「ほてる」、「電流が流れる」、「痛い」等々、脚に不快を感じるそうだ。そこで、今号では、「むずむず脚症候群」について獨協医科大学内科学(神経)主任教授・平田幸一先生に症状や原因、治療法などについて伺った。
ドクターズプラザ2013年12月号掲載

男性より女性。中高年に多いむずむず脚症候群

むずむず脚症候群の人の約半数は周期性四肢運動障害を合併

──むずむず脚症候群は、いつ頃からある病気なのでしょうか。

平田 今から300年以上前の17世紀には、むずむず脚症候群と思われる疾患について、英国の著名な内科医トーマス・ウィリス(Thomas Willis)が最初の記録を残しています。その後長い間忘れられたといっても過言はないのですが、1945年、カール─アクセル・エクボム(Karl-Axel Ekbom)が「レストレスレッグス症候群:Restlesslegs syndrome」という名称を用いて、この疾患について詳細に報告し、現在の診療の礎になっているのです。

──むずむず脚症候群とは、どのような病気なのでしょうか。また、患者さんはどのくらいいるのでしょうか。

平田 むずむず脚症候群は、脚がむずむずするなどの不快感が現れ、不眠をはじめとし生活の質を損なわせる病気です。まだよく知られていないこともあり、むずむず脚症候群に気がつかず、長年悩まされている人も多いのですが、適切な治療によって症状は改善します。日本には症状の軽い人をいれると200~400万人の患者がいると推測されています。男性より女性に多く、中高年の人に多く見られます。

──患者さんは増加傾向にあるのでしょうか?

平田 実際増加しているかはわからないのですが、疾患の存在自体が知られるようになり、こんなに多いものだったんだと認知されたのだと思います。

──女性や中高年に多いとのことですが、理由はあるのでしょうか。

平田 症状の発現には鉄の不足とドパミンの機能不全があります。女性では生理的に鉄が低くなり、また、加齢はドパミンの機能不全を引き起こしやすいからと考えられています。

──どのような症状が現れるのでしょうか?

平田 かなり多くの人がその症状は脚の表面ではなく内部にあると訴えます。またこの病気はレストレスレッグス症候群とも呼ばれます。脚の不快感はさまざまで、「虫がはっているようだ」、「ほてる」、「電流が流れる」、「痛い」などと表現する人もいます。症状は、横になっている時や座っている時など、じっとしている時に出やすく、夕方から夜にかけて起こりやすいという特徴があります。脚を動かしたり、歩き回ったりすると症状は軽くなるか、時には消失します。

夜、ベッドに入ると症状が現れるため、なかなか寝つけなかったり、就寝中に症状が現れて、寝返りを打ったり、脚を叩いたり、起きて歩き回ったりせざるをえなくなるため、睡眠不足になります。その結果、日中、耐えがたい眠気に襲われ、仕事や家事に集中できなくなります。進行すると、日中にも症状が起こるようになります。会議中や授業中、映画館にいる時、電車に乗っている時などに症状が現れ、じっとしていられなくなるため、さまざまな支障が出ます。むずむず脚症候群は、このように日常生活にさまざまな支障が起こり、生活の質が低下することが問題になります。

脚に不快な症状を起こす病気には、睡眠中に足首から先がピクッと動き、何度も繰り返す「周期性四肢運動障害」(※1)もあります。むずむず脚症候群の人の約半数は周期性四肢運動障害を合併しています。

不快感を軽減するため行ってしまう動作

Point 脚を動かしたいという強い欲求と、脚を動かすことで不快感が軽減することが、レストレスレッグス症候群の重要な特徴である。進行すると下肢だけでなく上肢にも症状が出現することがある。

<歩き回る>

<足踏みをする>

<さする>

<こすりつける>

<叩く>

神経伝達「ドパミン」の働きの低下や鉄の欠乏が関係!?

──このような症状が起こる原因は?

平田 このような症状がなぜ起こるのか、まだはっきり解明されていませんが、運動に関する情報を伝達する脳内の神経伝達物質「ドパミン」の働きの低下や鉄の欠乏が関係していると考えられています。鉄は、ドパミンの働きに欠かせない物質です。むずむず脚症候群は、特別の原因のない「一次性(特発性)」と、病気や服用して薬が原因となる「二次性」に分けられます。二次性のものには、鉄欠乏性貧血や妊娠などで鉄が不足している人、腎不全の人、ドパミンが減少するパーキンソン病の人、抗うつ薬などの薬を服用している人などに見られます。

一次性のものには、家族歴がある人がいて、親にむずむず脚症候群があると子どももむずむず脚症候群になりやすいことが知られています。ひどくなると脚を切ってしまいたいという人もいるほど、本人にとってはつらい病気ですが、正確な診断が難しいため、神経痛、うつ病、皮膚病、関節炎などと誤診されたり、気のせいだとされたりすることも少なくありません。気になる症状がある人は、睡眠障害の治療を行っている医療機関、神経内科や精神科を一度受診してください。

一般的にはむずむず脚症候群を診断する特定の検査はなく、問診で症状を聞き、診断基準をすべて満たす場合、むずむず脚症候群と診断されます。

──むずむず症候群の診断基準というのは?

平田 むずむず脚症候群の診断基準は①下肢の不快感があり、それが原因で脚を動かしたい欲求が起こる②横になっているなど、じっとしている時に起こる③脚を動かすと不快感が軽減する④日中より夕方や夜に起こる、の四つが挙げられます。

抗けいれん薬を進化した薬や鉄剤による鉄の補充が効果

──どのような治療法があるのでしょうか。

平田 ドパミンの働きを改善するドパミン作動薬による薬物療法が治療の基本です。日本では、2010年1月にドパミン作動薬の一つである「プラミペキソール」がむずむず脚症候群の治療薬として健康保険が適用されるようになりました。この薬はむずむず脚症候群の人の約8割に効果があると言われています。また、最近貼り薬のドパミン作動薬「ロチゴチン」が発売され、特に症状も重い方には朗報です。

ドパミン作動薬は、パーキンソン病の治療薬としても使われています。長期間服用する必要がありますが、パーキンソン病で使う場合に比べてごく少量を服用するので、重い副作用はないと考えられています。また、抗けいれん薬の進化させたお薬として「ガバペンチンエナカルビル」が発売され、やはり症状の重い方や、「痛み」が主体の症状には効果的です。それから鉄が不足している場合は、鉄剤によって鉄を補充します。

睡眠薬は、軽症の場合は使うこともありますが、重症の場合には効果がなく、かえって症状を悪化させることもありますので、医師とよく相談して使用することが必要です。

──日常生活では、どのような注意が必要ですか。

平田 発症から間もない場合や軽症の場合、日常生活を見直すことで症状が改善することもあります。お茶や紅茶、コーヒーなどに含まれるカフェイン、アルコール、たばこに含まれるニコチンは、症状を起こりやすくします。ことに症状が現れやすい夕方以降は、これらの摂取をできるだけ控えるようにしてください。

──カフェインやニコチンが症状を起こりやすくするのはなぜでしょうか。

平田 それらの刺激が結果的に末梢神経、すなわち手足の交感神経活動を上げすぎて具合を悪くします。筋肉の疲労がある時も症状が起こりやすくなります。激しい運動は避け、ウォーキングなど適度な運動を行うようにしてください。寝る前にマッサージやストレッチなどを行うと、症状を軽減させることができます。暑い時期は冷たいシャワーを当てると症状が和らぎ、寒い時は熱いシャワーを当てると症状が和らぐ人もいます。温度による皮膚への刺激が症状を改善させると考えられます。また、何かに集中していると、症状があまり気にならなくなります。趣味など、集中できるものを持つようにするのもお勧めです。これは交感神経の力を亢進するから効果があると考えていいでしょう。

 

※1 周期性四肢運動障害

睡眠中に片足あるいは両足の不随意運動(ピクピク)が周期的に起こるため、頻回に脳波上の覚醒反応を生じ、夜間の不眠や日中の過眠が生じる病気です。ご本人は自覚していないことが多く、診断には終夜ポリソムノグラフ(polysomnography:PSG)検査を行う必要です。むずむず脚症候群と合併することが多く、年齢とともに増加します(厚生労働省;e-ヘルスネットより)

ドクターズプラザ2013年12月号掲載

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