2019

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それぞれの年齢層にあった睡眠時間とは?

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立正大学心理学部教授・博士(医学)
西松 能子

ドクターズプラザ2018年9月掲載

よしこ先生の睡眠の話

18歳を過ぎると10年で10分短くなる!?

赤ちゃんの仕事は寝ることと泣くこととよくいわれます。実際、赤ちゃんは何時間くらい寝るのでしょうか。新生児の場合、1日の大半は寝ているといわれます。そのとおり、生後15日までは、16時間~18時間寝ています。2カ月ほどたつと、しだいに睡眠時間は短くなっていき、寝返りをしたりハイハイをしたり、運動量が増えるに従い、睡眠時間は短くなっていきます。1歳までの赤ちゃんは14時間~15時間睡眠を取るといわれ、1歳児~3歳児を預かる保育園では、必ず長いお昼寝の時間がつきもので、大体12時間~14時間寝るといわれています。幼稚園に通うようになると、お昼寝の時間がなくても、何とかなりそうです。11時間〜12時間の睡眠で活動ができます。小学生には、10時間~11時間の睡眠が必要です。何だか中学受験で10時過ぎまで塾通いをしている小学生の姿が頭に浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。大丈夫です。夜間の睡眠が短ければ、きっと学校の授業中に居眠りをして、帳尻を合わせていることでしょう。なかなかヒトの脳と睡眠はしたたかです。中学、高校生になると、もう少し睡眠時間は短くてもよいようです。8.5時間~9.5時間といわれています。

それにしても、難関校といわれる大学に入学するための勉強では、4当5落など、4時間睡眠で頑張れば合格する、それ以上では不合格といわれたものですが、とても睡眠の生理とは一致しません。長期に及ぶ短時間睡眠が日中の生産性を低下させることがよく知られていますが、受験生は、睡眠時間を確保しながら上手に勉強することが、合格への早道かもしれません。18歳になると、7時間~9時間の睡眠で十分だといわれています。それ以降は、10年で10分短くなります。45歳では6時間〜7時間、65歳では6時間というわけです。「えっ?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。80歳、90歳になると、何だか1日中うたた寝をしているおばあちゃんやおじいちゃんのイメージがある方もいらっしゃるかもしれません。「還暦を過ぎたら赤ちゃんに戻って1日中寝るようになった」「年とともに寝る時間が長くなった」などとおっしゃる方も身近にいるかもしれません。実は、年を取って疲れやすくなり、横たわる時間は増えるのですが、途中で起きる時間も増えているのです。お年寄りの睡眠は、浅く、途中で起きて、レム睡眠が少ない、というのが特徴です。あなたのおばあちゃんが、「6時には床に入って、朝は7時過ぎには起きるよ」と言ったとしても、実際の睡眠時間は3分の2~半分程度と考えた方がいいでしょう。

とはいえ、現代社会は、どんどん睡眠時間を短くしています。NHK の調査によると、日本人の平均睡眠時間は、この40年ほどで約1時間短くなっています。夜10時の睡眠者率は1960 年代には65%でしたが、1995 年には25%を切りました。都心では、24時間営業のスポーツクラブやスーパーが当たり前の時代です。

前回お伝えしたように、睡眠は「休息のための戦略」ですから、睡眠不足では十分な休息が取れません。日中の居眠りや生産性の低下によって、何とか休息しようとするわけです。また、睡眠には性差もあるといわれています。青年期は女性に比べて男性は夜型傾向が強いのですが、45歳を超える頃から男性が朝型化していき、55歳くらいになると女性と男性が逆転し、男性の方が朝型となります。無理に、夫の朝型化に合わせることが、妻の不眠につながるともいわれており、睡眠の相互理解が夫婦円満のコツかもしれません。

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