2025

01/06

「看護師」と「助産師」。それぞれの免許が必須!!

  • 助産師のお仕事

杉田 理恵子
東京家政大学健康科学部看護学科准教授

新連載 助産師のお仕事(1)

初めまして。この度、助産師に関するお話をする貴重な機会を頂きました。東京家政大学健康科学部看護学科に勤務する杉田理恵子です。大学では母性看護学・助産学を担当しています。よろしくお願いします。

助産師になるためのいくつかのルート

まず初めに「助産師」とは文字通り、出産する母親を助け生まれてくる子を取り上げることを仕事とする者のことを言います。

日本の助産師は厚生労働大臣の免許を受けて助産することができます。助産師は「保健師助産師看護師法」で「助産又は妊婦、褥婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう(第一章 第3条)」と定められており、助産師になるためには、助産師学校や大学などの助産師養成課程で1年以上の学科を修め、助産師国家試験に合格し免許を受けることが必要です。助産師養成課程には1年課程の助産師専門学校や、短大・大学の専攻科の他に2年課程の大学院修士課程などありますが、どの課程を修了していても免許は同じです。

ここまで読むと、助産師になるには最低で1年間の教育を受ければいいと思われそうですが、その前に看護師になるための教育を受けて看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣から看護師の免許を受けなければ助産教育課程に進むことはできません。

では看護師教育ってどうやって受けることができるのか? という疑問が湧いてくるかと思いますので、次に看護師になるためのルートについてご説明したいと思います。

日本の看護師教育制度は少し複雑で、いくつかのルートがありますが、分かりやすく説明すると、高校卒業後に看護専門学校・短大(3年課程)、もしくは大学の看護師養成課程か、中学校卒業後に5年一貫の看護師養成課程で教育を受けて看護師国家試験に合格することが必要です。看護師になるためには最短で20歳ということになりますが、最近では高校・大学卒業後に一般企業で働いた後に看護師を目指す方も少なくありません。そういった方々は、修了までの期間が短い専門学校や短大などを選ぶ方が多いようです。

少し話がそれましたがつまり、日本で助産師になるには看護師教育を終えた後に助産師教育を受けて、看護師と助産師の国家試験に合格しそれぞれの免許があることで、初めて助産師として働くことができるというシステムになっています。

出産する女性に付き添って励ましたい。生まれてくる赤ちゃんを取り上げたい。看護学校や大学入学の前から助産師になりたい気持ちを強く持ち、免許を取得する人もいらっしゃいますが、看護実習中に産科で助産の仕事に触れ、助産師なりたいと思う人も多くいます。今、助産師になろうか迷っているようなら、先ずは看護師養成課程に入学してから考えてみてもいいのではないかと思います。

ちなみに私が勤務している大学は4年間で看護師と助産師、保健師の教育課程を設けていて、看護師教育は全学生が対象ですが助産師・保健師は選択制になっています。4年間で看護師、助産師、保健師の教育課程を受けられる大学もありますが、当大学の助産師課程・保健師課程には定員があり、希望する場合はどちらかを選び3年次に選抜試験を受けてもらっています。4年間で複数の免許を取得するということは、修業期間が短い一方、授業や実習が増えるため心身共にタフさが求められる場面もあります。

昔も今もタフさが求められる!?

私が助産師を目指したのは1989年、合計特殊出生率が過去最低値となった丙午を下回り「1.57ショック」と呼ばれた時期でした。看護学校卒業後、短大の助産専攻科に進学したのですが、実習病院では分娩が無い日の方が珍しく、満床で産後のお部屋の空きが無いことも多々ありました。専攻科の新入生歓迎会を実習病棟のスタッフが開催してくれたのですが、出し物をすることになり同期で「♪24時間働けますか~♪」と無邪気に歌った記憶があります。当時、助産師国家試験受験資格を得るためには、助産師課程の実習で正常分娩を10例介助することが条件の1つでした。私たちの同期は20名いましたが、3カ月程度でほぼ全員が実習を終えることができていました。

多い日には、1日で10件以上の分娩があり学生が午前と夜間で2件介助することもありました。今思えば、恵まれた環境だと言えますが当時は出産する女性に付き添い、一晩中腰をさすり、記録物の作成や指導者への報告などに追われ2~3日布団で寝ていないなど皆、無我夢中で互いに助け合い何とか実習を乗り越えていました。

少子化が進む今日の助産実習は、実習期間中に陣痛で入院する産婦が来ること、陣痛室にいる産婦が出産になることを願いつつ……といった状況で、助産師学生には昔と違った意味でのタフさが必要になっています。次回は、助産師課程に関する話題についてお話したいと思います。

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