2018

04/12

「ポリファーマシー」による有害事象

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小黒 佳代子
『小黒先生の薬の話Q&A』
株式会社メディカル・プロフィックス 取締役、株式会社ファーマ・プラス 取締役。
一般社団法人 保険薬局経営者連合会副会長

ドクターズプラザ2018年3月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(48)

6種類以上の薬剤の服用で、薬物有害反応!?

<Q1>お腹がいっぱいになるほどたくさんの薬を服用しています。大丈夫なのでしょうか? 「ポリファーマシー」という言葉をご存知でしょうか?

<A1>

「ポリファーマシー」という言葉をご存知でしょうか? 「ポリ」とは「複数の」や「多くの」という意味の接頭語で、多くの薬を服用している状態で、それによって有害事象が起こることを問題視する言葉として最近よく使われています。ポリファーマシーは一般的には4〜6種類以上の薬を服用していることを指しますが、明確な定義はありません。

副作用のない薬はありません。副作用とは、もともと主作用に対する関連のない薬理作用のことを言います。つまり副作用は必ずしも望ましくない作用ばかりではないことから、近年では有害事象という言葉もよく使われます。

医薬品の使用、放射線治療、または手術等と時間的に関連のある、好ましくない、意図しないあらゆる徴候(例えば、臨床検査値の異常)、症状、または疾病を有害事象といい、その中でも投与量にかかわらず医薬品との因果関係があるものを薬物有害反応(Adverse Drug Reaction : ADR)と区別して言っています。

高齢者では、さまざまな体調の変化から多数の薬を服用しがちです。例えば高血圧などで内科受診を、神経痛で整形外科を、トイレが近くなって泌尿器科、目が見えにくくなり眼科受診などです。内科で逆流性食道炎の治療として胃薬が処方されていながら整形外科で痛み止めによる副作用防止のために胃粘膜保護の胃薬が処方されていたり、泌尿器科で降圧効果もある頻尿の治療薬が処方されたり……、このようなことを重ねているうちに服用する薬剤が増えてしまい、同じような作用の薬を数種類服用することになってしまっている方は多くいらっしゃいます。

日本老年医学会の報告では、6種類以上の薬剤を服用している患者さんでは薬物有害反応の発生が高まるといわれていますが、服用数にかかわらず、種類が少なくても不要な薬剤は減らし、必要な薬剤を適正に服用するということが大切です。

薬局では、このような服薬情報を把握し、同種同効の薬剤が処方されていないか、薬物有害反応がないかを毎日の業務の中で確認しています。まずは、お薬手帳を携帯し、受診の際や薬局で相談すると良いでしょう。

 

残薬の原因と解消方法

<Q2>高齢の母の薬が家に余っています。整理したいのですが、どこから手をつけたらよいか分かりません。捨ててしまった方が良いでしょうか?

<A2>

日本国内の残薬は75歳以上の高齢者だけで年間475億円と推計され、社会保障費が逼迫する中で、社会問題にもなっています。残薬が生じてしまう原因としては、先述のポリファーマシーの問題もあります。多くの薬をさまざまな医療機関からもらったものの、服用方法が理解できずに残ってしまうというものです。継続して服用しているときの服用忘れもあります。きちんと服用されないままに、医師は服用しているものと判断して症状に応じてさらに薬が増えてしまう場合もあります。

また、処方内容が変更となった時に以前のものをよけておくうちに残薬が増えてしまう場合もあります。湿布などは、なくなるのが心配で残っているのに処方されて増えていくこともあるでしょう。

このように、残薬が生じてしまう原因は患者さんそれぞれによって異なります。お薬を服用1回分ごとに分包する一包化や、お薬カレンダーを利用したり、薬効を意識することで服薬コンプライアンスが向上する場合もあります。また、薬の剤形を変えることによって服薬回数を1日1回にまとめることできちんと服用できるようになる場合もあります。

厚生労働省による平成27年の「日本の医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究」の中間報告によると、薬剤師の関わり方や地域によって差はあるものの、薬剤師による年間の残薬解消額は100億円〜6千億円と推測されております。まずはかかりつけの薬局に残薬をご持参し、ご相談してみてください。