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「ダブルケア」とは?

介護

川内 潤
NPO法人となりの介護 代表理事
ドクターズプラザ2020年5月号掲載

隣(となり)の介護(7)

「ダブルケア」という言葉をご存じでしょうか。「ダブルケア」とは、「介護」と「子育て」といったように、家族や親族など複数のケアに携わることを指す言葉です。またそれを担う人たちは「ダブルケアラー」と呼ばれ、現在、晩婚化や高齢出産などにより、増加傾向にあるのです。

社会問題になりつつある「ダブルケア」

「ダブルケア」に携わっている世代は、社会において現役世代であることが多く、「仕事」「介護」「育児」を1人で抱えてしまいがちです。それゆえ、「仕事」「子育て」「介護」の板挟みになり、介護離職を選択する人も少なくありません。特に女性は産休や育休中に、そのまま「ダブルケアラー」になるケースがあるのです。実家に帰り、家族に子育てを手伝ってもらっている後ろめたさから、自分でも気が付かないうちに日常的な介護要員となり、「ダブルケア」から抜け出せなくなってしまうのです。追い詰められた末に、産後うつや介護うつを同時に発症してしまう方もいるようです。

このように「ダブルケア」は、日本の大きな社会問題・政策課題になるとして、横浜国立大学・相馬直子教授、英国ブリストル大学・山下順子上級講師が2012年よりその実態を調査研究し続けています。実はこの「ダブルケア」という言葉も、2012年にこの二人の研究者により作られた造語なのです。二人の研究者と企業がともに行ったあるアンケートでは、調査対象(大学生以下の子どもを持つ父親・母親)の5人に1人は「ダブルケアが自分事の問題」と回答するほど、身近な問題として捉えられています。

似て非なる「育児」と「介護」

「育児」と「介護」は共通点が多く、2つを「大切な家族の世話」として同様に考える方がいらっしゃいます。中には「親のお世話をしながら、育児もできるなんて良かったね」と、美談として片付けられてしまうこともあるようです。ですが、「介護はそれまでの家族関係を維持することが重要で、直接の介護は人に任せた方が上手くいく」「育児は子どもとの愛着形成をする時間であり、大変ながらもそこには成長という大きな喜びを得ることができる」という大きな違いがあり、両者はまったくの別物なのです。

●「介護」はプロの力を借りて

産休や育休などで自身が「介護」に直接関わることができても介護保険などによる介護サービスを利用し、外に助けを求めてください。「介護」はプロの手を借りて、「育児」を優先する介護体制を作ることに努めましょう。なぜならば、「介護」はどんどん直接的なケアが大変になっていく傾向にありますが、「育児」は成長とともにそれらが減っていくからです。

●まずは地域包括支援センターに相談を

そうはいっても、一度直接の介護を担ってしまうと、抜け出せなくなってしまいます。「子どもを連れていくと喜ぶ」「子育てのときに母が近くにいると助かる」という想いから、いつの間にか直接の介護を担ってしまいがちです。自身がこのような状況に陥ってしまいそうなとき、まずは地域包括支援センターに電話でも良いので、相談をしてみましょう。また、妻がそういった状態に陥っていることに気が付いたら、夫が代わりに地域包括支援センターに相談をしてもいいのです。「妻の家のことに口を出していいのか……」と、悩まれる方もいらっしゃいますが、相談者は匿名のままで、地域包括支援センターに相談を受け付けてもらうことができ、奥様への支援の提案をしてもらえます。

●周りに「ダブルケア」をしている人がいたら……

たとえ自分に関係がなくても周りに「ダブルケア」をしている人がいたら、すべてを1人で抱え込み困難な状態になっていないか、気に掛けてあげてください。直接的な援助でなくても、ただ話を聞くだけで良いのです。人は話すことで、状況が整理でき、客観的になれることがあるからです。困っている状態が明らかであれば、地域包括支援センターに相談することを勧めてみるのも良いでしょう。

●「ダブルケア」も早めの対策が要

「ダブルケア」は親御さんの骨折やガンなどの病気など、ある日、突然降りかかってくることもあります。そのため、管轄の「地域包括支援センター」の連絡先を調べておくことは今すぐできる備えとなります。そして、いざというときのために、親が元気なうちから「これからの生活で、どんなことをしていきたいか」などを話し合っておくことが「ダブルケア」を上手に乗り越えることにつながります。

 

 

 

ドクターズプラザ2020年5月号掲載

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