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「もの」中心から「ひと」中心の業務へ

小黒 佳世子
『薬剤師のお仕事』『小黒先生の薬の話Q&A』連載
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長
隔月刊ドクターズプラザ2019年9月号掲載

薬剤師のお仕事(5)

調剤業務のあり方

「医薬品、医療機器等の品質、有効効性及び安全性の確保等に関する法律」通称「薬機法」の改定から5年が経過し、昨年12月25日には、厚生労働省にて薬機法等制度改正に関する取りまとめが発表されたことは前号でも書かせていただきました。薬剤師の仕事が薬という「もの」中心の業務から、「ひと」中心の業務に変換が求められています。薬剤師による対人業務を充実させる一方で、これまで通りに患者に供給する医薬品の品質を確保するためには、薬という「もの」に対する対物業務の効率化を図る必要があります。本年4月2日には厚生労働省から「調剤業務のあり方」が通知され、薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の基本的な考え方が明示されました。具体的には以下の通りです。

【前提条件】

•調剤に最終的な責任を持つ薬剤師の指示に基づき、その薬剤師の目が現実に届く場所で実施すること
•薬剤師の薬学的知見も踏まえ、処方箋に基づいて調剤した薬剤の品質等に影響がなく、結果として調剤した薬剤を服用する患者に危害の及ぶことがないこと
•当該業務を行う者が、判断を加える余地に乏しい機械的な作業であること
•調剤した薬剤の最終的な確認は、薬剤師が自ら行う必要があること

【具体的な業務内容】

•処方箋に記載された医薬品(PTシートまたはこれに準ずるものにより包装されたままの医薬品)の必要量を取りそろえる行為
•薬剤師による監査の前に行う一包化した薬剤の数量の確認行為

患者さんの身近な相談相手として

薬は病気を治すために使われるもので、私たち薬剤師は薬が体の中に入ってどうなるのかを大学で学んできましたので、私は、薬剤師の業務は薬という物を通じて患者さんに接することだと考えてきました。薬局が処方箋と薬の引換所のように国民から見える現実はまだまだ続いていると思いますが、薬剤師が身近な相談相手として期待されていることは、毎日実感しています。なかでもよくご相談を受けるのは医師に言い出せないということです。医師も患者さんの治療に誠心誠意当たっていますが、病状が思わしくなかったり、十分にコミュニケーションが取れなかったりすると患者さんは不安になります。また高齢化でご自分の症状を上手に伝えられない患者さんもいます。

昨年秋にも心に残るご相談がありました。ある総合病院で心筋梗塞によるステント術後からかかりつけ薬剤師として関わっている患者さんです。ステントが詰まらないように抗凝固薬と心不全の薬、糖尿病薬を総合病院から処方され、服用していました。薬の副作用もあって徐脈傾向でしたが、ここ数週間は動くのも大変になり、薬はまだあったものの担当医が不在の日にその病院に行って臨時に受診したところ、ビソプロロールフマル酸という心不全の薬が削除になり、すでにお渡しした薬を修正しました。一旦は症状が治まりましたが、次の担当医の受診の際にはその薬が再開となって、抗凝固薬が変更となりました。その後また徐脈傾向が進み、朝晩の散歩もできないと連絡があり患者さん宅に訪問してみました。腕に絆創膏を貼っており、どうしたのか聞くと、数日前に飼い猫に引っ掻かれた傷の血が止まらなくて困っているとも言われました。一番最近の血液検査を確認したところ、血液が止まらないのは腎臓の機能が低下しているのに対して抗凝固薬の用量が多かったためであると思われ、そのことを医師に伝えるとともに、徐脈に対してビソプロロールフマル酸の減量または中止について、担当医に薬剤情報提供書として手紙を書いて患者さんが受診の際にご持参していただきました。ビソプロロールフマル酸も抗凝固薬も減量になりましたが、その後も徐脈は治らず、またご相談がありました。

今のままの治療でいいのか……、違う先生にも診てもらいたいが今の先生が気を悪くしたらどうしようか……、違う先生に診てもらったところで合わない先生なら元に戻れるようにしたいなど、患者さんの方も先生との信頼関係を崩したくないと悩んでいらっしゃいました。私がセカンドオピニオンなどもあり、気にしなくても良いのではと話したのですがご納得されず、私が薬剤師と
して患者さんの副作用の観点から精査を希望されていることを情報提供書として書き、別の循環器の専門病院に受診してもらうことにしました。その病院では精査の上、ペースメーカーの適応であると診断され、数日入院してペースメーカーを施行し、医師からも私に詳細なご返答をいただきました。患者さんは朝晩の散歩もできるようになり、お仕事もできるようになりました。

これまで薬剤師の仕事とされてきた業務の一部を効率化し、非薬剤師にも協力してもらうことで、薬剤師が患者さんのためにさらに力を発揮できるようになることを期待します。

 

隔月刊ドクターズプラザ2019年9月号掲載

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