柏木夏海 さん
東京医科大学 医学科3年
2025/09/01
将来は離島医療の道へ。山村留学が大きな動機に。
医療系学生インタビュー(72)
将来を決めた種子島での出会い
―医師を目指したきっかけを教えてください。
柏木 小児科の父と精神科の祖父が身近にいる環境で育ち、いつも医業が側にありました。私が医学科を目指す一番のきっかけになったのは、小学校4、5年生で経験した種子島の山村留学です。2年間現地の小学校へ通っていたのですが、離島では医療が乏しく、高速船で鹿児島本島まで通院する人が多くいることを知り、衝撃を受けました。私は3人兄弟の末っ子で、一番上の兄からはじまり、全員が種子島の山村留学を経験しています。地元の方たちも私の実家が医業ということをご存知で、地域の方々から「夏海もお医者さんになって、いつか種子島に戻ってきて診て頂戴ね」と言われたことがありました。その言葉がとても心に刻まれ、進路選択の過程で医師という職業を将来の夢として真剣に考えるようになりました。
―東京医科大学を選んだのはなぜですか?
柏木 高校在学時は国公立大学を目指していましたが全敗でした。しかしその時、改めて自分にとって国公立大学に行くことが大事なのか、医師として学ぶことが大事なのかを考え悩み、私立大学も志望校へ含めることに。茨城県の地域推薦枠での受験機会を得て、東京医科大学に合格することができました。
―学生生活はどのように過ごしていますか?
柏木 今は3年生なので、月に1回各科目の試験があり、平日は試験勉強を頑張っています。部活はヨット部に所属。ヨット部がある大学は少ないので、東京医科大学に入れて良かったことの一つと感じています。週末に江ノ島や鎌倉の海で練習するのは、リフレッシュにもなっています。また、子どもと接するのが好きなので「児童研究会」という部活にも所属し、血友病の子どもたちと一緒に夏はキャンプに出かけたり、地元の保育園でボランティアをしたりしながら、子どもたちとの関わり方を実体験の中で学んでいます。
アルバイトは、あえて医療以外の場へ
―課外活動は何かしていますか?
柏木 いつか離島で働くために緊急医療の知識を身に付けたいと思い、一次救命の手技などを学ぶことができる「DOCS(Development of Clinical Skills)」という学生団体に所属しています。また、先輩に紹介をしてもらって居酒屋でアルバイトをしています。医学部に入ると、出会う人は医学部や看護学部の人たちが多いので、全く違う環境の人との出会いを大切にしたいと思って始めました。学生のうちにいろいろな人と出会って世界を広げたいと思っています。このアルバイトのおかげで人見知りせずに話せるようにもなりました。外国人のお客さまも多く、英語をもっと勉強したいというモチベーションが芽生えるきっかけにもなっています。
―これまで影響を受けた人や大切にしている言葉はありますか?
柏木 ガンジーの「Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever」という言葉を大切にしています。「明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学べ」という言葉で、英語の勉強中に出会いました。私も、今日という1日がかけがえのない1日だったと思えるように過ごし、全てのことから学び続ける探究心を大切に生きていきたいです。
そしてもう一つは、やはり種子島での経験です。里親さんに家族のように受け入れていただき、「おまえは医者になるんだから、いつか戻ってきて私たちを診てね」と話してくれた種子島のお母さんの言葉が忘れられません。これが、私の医学部進学への動機になっています。いつか離島医療を目指したいと考え、高校1年生の頃にはアメリカ海軍の病院船「マーシー号」の見学に行きました。病院船を見たことにより、離島医療についてより深く考えるきっかけの一つになりました。私の家族は毎年種子島で年末年始を過ごします。初日の出を見ながら、自分の夢を再確認する大切な時間です。
種子島の医療を支える、最終目標を胸に
―将来はどのような医師になりたいですか?
柏木 僕は茨城県の地域推薦枠で入学したので、卒業後はしばらく茨城県で働く予定です。茨城県の地域医療に携わり、診て考えて判断し、的確な診療を行える医師になるための勉強とトレーニングをしっかりとしたいと考えています。茨城県内にも医師不足の地域があります。積極的にその地域へ関わって学んでいきたいと考えています。今は、外科に興味がありますが、救急医療にも惹かれています。最終的には種子島での離島医療に携わっていきたいと思っていることもあり、一人ひとりとしっかりと向き合って自信を持って診療できる医師になることが、一番の目標です。
―最後に、後輩たちへアドバイスをお願いします。
柏木 医学部受験は、自分にとって想像を超えるような孤独な日々でした。受験期間を振り返ると、自分が本当に入りたい大学を目指すためには、自己分析を始めさまざまな戦略を考えることが重要だったと思います。ただ、自分一人で出来ることは限られています。一度普段の生活を振り返ってみてください。たくさんの人が周りにいて、支えてくれているはずです。ぜひ、周りの人を頼ってください。そして、支えてくれている方々への感謝を持ちつつ、今の自分たちにできることを精一杯頑張ってください。