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町全体の幸福・健康を支える存在を目指して

桐澤 くらら さん

札幌医科大学6年生

医療系学生インタビュー(48)

医療=医学ではない

―医師を目指したきっかけは何ですか?

桐澤 出身地である北海道根室市が医療過疎地だったことの影響が大きいです。私が生まれたときには総合病院に小児科医の先生がおらず、入院できる設備の小児科もありませんでした。生後7カ月のときに麻疹から間質性肺炎になってしまったのですが、その1カ月前に着任した小児科の先生に助けていただいたんです。成長してから親に当時の話を聞いたり、家族で幸せに暮らしたりする中で、医療というのは住民の幸せを支える重要な存在だと感じてこの道を目指し始めました。また、医療に携わるには医師しかないと思い込んでいたというのもあります。当時は医療=医師というイメージしかありませんでした。

―授業以外ではどのような活動をしていましたか?

桐澤 学校では演劇部でしたが、北海道大学のサークルにもいくつか所属していました。手話サークルでは、ろう者の方と支援する・されるという関係ではなく友だちとしてつながれたことは財産です。国際交流サークルSACLAでは、世界各国からの留学生と互いを知り合う経験ができました。

人を診るお医者さんになるので、まず人を知りたい・理解できるようになりたいと考え、いろいろなバックグラウンドを持った人とコミュニケーションを取りたいという思いが原動力で活動をしていました。大学では医学中心に学びますが、そこにとどまらずさまざまな人々と学び合うことで医学=医療ではないという思いが強くなりました。

他にも、自分の大学の病理学第二講座という研究室での研究活動、日本プライマリ・ケア連合学会 学生・研修医部会での北海道支部の委員など、いろいろなところで貴重な活動をさせてもらいました。

―盛りだくさんの学生生活ですね。

桐澤 人生は多様です。受け入れがたい困難が待ち受けていることもあるかと思います。でも、「どこで暮らしても、人生の最期まで幸せを享受し続けられる社会をつくりたい」というゴールがあって、そこにつながる活動は自らのキャパがある限り、挑戦しようと取り組んでいます。

明日、思いもよらない病気やアクシデントに見舞われるかもしれません。そういう可能性は誰にでもあります。医療はとても大事ですが、全てを治せるわけではありません。それでも人が幸せに生きていくには、例えばその町にやりがいを感じられる仕事があるとか、辛いことを忘れさせてくれるエンターテインメントがあるとか、そういう部分も大切だと思うんです。医療の世界は日進月歩ですが、時点時点で限界があるのも事実です。そうしたその時々の医療の限界に真摯に向き合うと同時に、医療の限界を理由に患者さんの幸せを諦めない医療を実現したいのです。そういう視点を持って、適切な治療をすることはもちろん、町の医療・福祉・経済のバランスを考えて、町全体の幸福度や健康の向上に貢献できるお医者さんになりたいと思っています。そのために仲間をドンドン見つけたくて……、結果たくさんの活動をすることに(笑)。でもあまり忙しい自覚はなく、とても楽しいです。

医療職に限らず、あらゆる多職種連携ができる医師に

―今までの人生で影響を受けた人物や言葉はありますか?

桐澤 一緒に活動している方のことばです。自らの行動指針として、「『やりたいこと』ではなく『つくりたい世界』を想い描く」という考えに共感を覚えました。それまでは自分のパッションをやりたいことに注ぎがちでしたが、そうすると同じテーマで活動する人をライバル視して、先を越されるとモチベーションも下がってしまうことがあります。でも「つくりたい世界」を目指すことで、自分がやりたいと思ったことを誰かがやっていても同志として感謝できるし、じゃあ自分は違うところを補完していこうという気持ちになれます。このおかげで、「社会に足りない・求められていること」は何かなという視点を持って、自分のできることを組み合わせていくという発想が身に付きました。困難なことや、新しい挑戦など、多くの人がやりたがらないところに自分のニーズがあったなら、いとわずやりたいと思っています。

―将来どのような医師になりたいですか?

桐澤 総合診療医になりたいです。医療を頼ってくる全ての人に、適切な治療と介入をしたいという思いがあります。また、診療科にかかわらず、多職種連携ができる力を持ったお医者さんになりたいです。多職種というのも医療者だけではなく、行政の方やもちろん住民の皆さんなど、町の健康・幸せを担う全ての人です。コミュニケーションを大切にして、連携力で健康を支えるのが目標です。

―医学部に通う後輩たちにアドバイスをお願いします。

桐澤 いろいろな人と関わって人とのつながりを大事にしてほしいです。人とのつながりの豊かさが、将来自分がやりたいことを見つけたときに力になると思います。入学当初はやりたいことやつくりたい世界が見つからないという人もいると思いますが、とにかく周りの人を大切にして一つずつ関係を積み上げていくうちにきっと見えてきます。

ドクターズプラザ2021年9月号

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