髙山知奈 さん

名桜大学人間健康学部看護学科3年

2024/07/01

愛と心で、お母さんを孤立から守る助産師に

医療系学生インタビュー(65)

命に携わる仕事として選んだ助産師の道

―助産師を目指していらっしゃるそうですね、目指し始めたきっかけはどんなことですか?

髙山 意識し始めたきっかけは、中学3年生の夏に仲が良かった友人を亡くし、命について自分なりに考えたことです。その中で「命に携わる仕事をしたい」と思うようになり、命の誕生を支える助産師という仕事に憧れました。

そしてより具体的に考えるようになったのが、母の経験を聞いたときです。

母は私を生む前に、異所性妊娠(子宮以外の場所に受精卵が着床すること)で赤ちゃんを亡くしていました。そのとき助産師さんが、「次出会う子のために頑張ろうね」と声を掛けてくれ、母はその言葉にとても支えられたそうです。

その話を聞いて、喜ばしい場面はもちろんつらい状況に置かれるお母さんもいるんだと改めて知り、どんな方にも寄り添える助産師になりたいと決意が新たになりました。

―名桜大学を選んだ理由はなんですか?

髙山 大きく分けて二つあります。

一つ目は専門の学科やカリキュラムに惹かれたことです。助産学専攻科がある上、沖縄県の北部地域にフォーカスした地域密着型のカリキュラムも充実していて、将来的に沖縄で地域に根ざした助産師として働きたい私にはぴったりだと感じました。入学してからは地元の方々と交流する機会が多く、地域を愛して地域に愛される温かい学校だなと実感する日々です。

二つ目は、沖縄の文化をはじめとした教養科目が充実していることです。教養科目としていろいろな文化に触れておくことで、例えば将来ケアする対象者さんの趣味を理解できるかもしれない。その人らしい生活を送るためのヒントが得られるかもしれない。そういった思いから、豊かな教養科目を学べる名桜大学に惹かれました。

信頼関係のキーワードは“ゆんたく”

―学外でのボランティア活動にも取り組まれているそうですね。

髙山 はい、“VAG(The Volunteer Activity Group)”というグループの代表を務めています。名桜大学では地域に根ざしたボランティア活動が盛んで、VAGはその中でも地域の方々の健康増進に携わる活動を行っています。

中心となる活動内容は、地域住民向けの無料健康測定会を開くことです。VAGには13のグループがあり、そのうち9グループが、それぞれの地域で開かれる朝市など、地域のおばあとおじい(おばあちゃんとおじいちゃん)が集まるところに月に1回出向いて血圧や体組成、運動機能などを測定しています。

健康測定会のほかにも、学生の学ぶ環境整備や、地域の行事のお手伝い、長期休暇中の子どもたちとの交流など、グループごとにさまざまな方法で継続的に地域との交流を行っています。

―VAGでは、どんなことを意識して活動されているのでしょうか?

髙山 大切にしていることの一つが、“ゆんたく”の時間です。“ゆんたく”とは、人と人が会話したり一緒に過ごしたりして心を通わせることを表す沖縄の言葉。ゆんたくの場では、最後まで耳と心を傾け、一緒に過ごす温かな時間を共に感じ合います。ゆんたくの時間の中で信頼関係を築き、生活や「日頃の健康に向けての努力」を知った上で、それを尊重しながら健康に繋がる提案をすることを意識しています。

産前から産後まで支えてこそのケアなんだ

―これまでに影響を受けた言葉はありますか?

髙山 名桜大で同じように助産師を目指している先輩が仰った、「助産師がお母さんと子どもに携われる時間は、これから始まる子育てのほんの一瞬」という言葉を大切にしています。

私はそれまで、「救急に強い助産師として、母体の救急搬送やハイリスク出産など高度な医療の求められる病院で働きたい!」と考えて勉強していました。しかし先輩の言葉を聞いて、知識や専門性だけではベストなケアはできないということに気付いたんです。目の前のケアをどんなに的確に行っても、住んでいる地域にどんな社会支援があるか、困ったときはどこに相談すればいいのかなどを一切提案しないままでは、退院後の子育てにはつながりません。産後の生活まで支えてこそのケアなんだ、という発想を持つきっかけになりました。

―将来はどんな助産師になりたいですか?

髙山 私は将来、愛を持って心からケアをする助産師になりたいと考えています。産前から産後まで寄り添い続けるには、相手の声に最後まで耳を傾け、他の誰でもないその人が本当に望んでいるケアを探すことが大切だと思うんです。これは、相手に対する愛や心がないとできないことです。

例えば“地域住民の繋がりが深い”という状況一つとっても、心強いと思う方もいれば、知り合いに見られるから病院に行きづらいとか、噂が広まるのが怖くて人に相談できないという方もいます。

沖縄は全国の中でも一番出産数が多く、助産師のニーズも高い場所です。だからこそ、多くの出産の中でも一人一人の立場に寄り添い、「この人に相談すれば安心」とお母さんを孤立から守れる助産師になりたいと思います。

―後輩たちへのアドバイスをお願いします。

髙山 お伝えしたいことは二つあります。一つ目は、何事にも挑戦してほしいということです。例えば、助産師の仕事と、おばあとおじいの交流には直接の関係はないかもしれません。でも取り組んでみると、信頼を築くためのコミュニケーション方法や、地域に継続的に関わる上での課題など、見えてくるものはたくさんあります。一見関係なさそうな経験にも学びは絶対にあるので、何でもチャレンジしてみてほしいです。

二つ目は、家族や友達、先輩、後輩、先生など周りの人を大切にしてほしいということです。私も、相談し合える友達や、勉強だけでなく個人の様子を気にかけてくれる先生方、そして一番近くで支えてくれる家族や祖父母のおかげで、今こうして心身とも健康に学ぶことができています。

たくさん勉強してたくさん遊び、そして周りへの感謝を忘れないことが、助産師としての将来につながると思います!

フォントサイズ-+=