伊本知香 さん

東京家政大学健康科学部看護学科4年

2024/09/01

患者さんに寄り添う、代弁者としての看護師を目指す

医療系学生インタビュー(66)

人と関わり、癒やしたい

―看護師を目指したきっかけはなんですか?

伊本 実は、最初は医師を目指していました。子どもの頃から医療ドラマなどを通して医療従事者の方々に憧れを持っていましたし、脳外科医になりたかった母の影響もありました。「母の夢を私が叶えたい」という想いもあり、高校3年の時に医学部を受験しましたが不合格でした。そして、もう一度、医学部を受験しようと思い浪人することにしましたが、その浪人中に『私は本当に医学部に行きたいのか?』と改めて考えました。

その時、私の医療職への憧れの根底にあったのは、「病気を治したい」ということよりも「人と関わり、癒やしたい」という気持ちだと気付いたんです。病気が治っても幸せを感じられない人もいますし、治らない病気や後遺症を抱える人もいます。そういう人との関わりは医師の役割ではないかもしれない。

この考え方は、病気が治る人にも治らない人にも寄り添う看護師の仕事により近いのではないかと感じ、看護師を目指し始めました。

―東京家政大学を選んだ理由は?

伊本 受験のタイミングなどが合ったことです。途中まで医学部志望だったので、看護学部を目指そうと決めた時には、もう受けられる大学が限られていました。その中で日程と自分の希望に合う学校を探し、東京家政大学を受験することにしました。急いで決めた進学でしたが、今ではこの学校で良かったと思う点がたくさんあります。

特に大きいのが、医療系学部だけではない総合大学だからこそ学べる幅が広いことです。例えば、板橋のキャンパスには国際系の学部があって、ネイティブの先生と交流できます。教養科目も充実しており、看護以外の知識に触れる機会が豊富です。

また授業以外にも、学内の保育園でのボランティアや、サークル活動、近隣大学や地域との交流イベントなどなど、先生方のお力添えもあって本当に多様な活動ができました。

自分がチャレンジしたいと思えば何でも経験できる、とても恵まれた環境です。

学外の学びで世界が広がる!

―どんなチャレンジをしていますか。

伊本 学習面でいうと、英語を学ぶことに力を入れています。学内の英語センターの先生から「専門知識と英語を組み合わせると強みになる」と聞き、私は看護の専門性と英語を組み合わせたらきっと強みになると思い、英語の勉強をスタートしました。1年生の時からネイティブの先生のオンライン授業を毎日受けて、3年生の夏休みにはイギリスに留学しました。

読める論文の量や触れられる情報が増えましたし、世界各国に友達ができました。いつか海外で働くのもいいかも、という夢も生まれました。専門外の学びは世界を広げてくれると身をもって感じました。

英語とは関係ないですが、BLS(一次救命処置)、ACLS(二次救命処置)の資格取得もチャレンジでした。現場で働かれている医師、看護師、医療系学生と心疾患の認識・治療を学べたことは循環器科に行きたい私にとって大きな学びでした。

―サークル活動もされているそうですね。

伊本 はい、学内では看護ボランティアサークルに所属しています。いくつか活動があるのですが、私はALS(筋萎縮性側索硬化症:身体の筋肉が次第に痩せて動かなくなってしまう難病)の方のご自宅に伺う活動を継続してきました。

必要な資格を取得した上で事業所に登録し、そこから利用者さんの紹介を受けて、ご自宅でのケアをさせていただいたり、訪問医療・看護の処置を見学させていただいたりするものです。

私が1~2年生の間担当したお宅では、利用者さんの奥さまと一緒に、胃ろう、痰の吸引、褥瘡ケアなどを行いました。また同じALSでも、人によって発症する年齢も進行度合いも、どこの筋肉から動かなくなるのかもさまざまです。

利用者さんやご家族が、どの段階でどんな意思決定をされるのか、それを看護師がどう支えられるのかということを考え続ける時間でした。

―アルバイトなどもしているのでしょうか?

伊本 病院でのアルバイトを2種類やっています。1つは、小児専門病院での救急受付です。土日や夜間に入ることが多く、診療報酬を反映してお会計を出したり、救急車に対応したりしています。親御さんから「子どもがこういう状態なんだけど、受診した方がいい?」という相談を受けることもあります。

もう1つは、“ナーシングアシスタント”として看護師さんの補助を行う仕事です。看護師さんの指示の下、患者さんの移動を助けたり、指定された薬剤を取りに行ったり、ベッドメイキングや環境整備、食事の配膳など、病棟の業務を担当します。どちらも実際の医療の現場に携わる仕事で、とても勉強になりますし、卒業後に働くイメージも湧きやすくなると思っています。

より良い看護には「興味に寄り添う力」も必要

―好きな言葉はありますか。

伊本 アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の“Stay hungry.Stay foolish”という言葉です。ジョブズ氏についてのドキュメンタリー番組で知ったのですが、あれだけ大きいことを成し遂げた人がなお「貪欲であれ」と言っていることに感銘を受け、自分もいろいろなことに挑戦し続けよう! と思いました。

―まさにその言葉のとおり“貪欲”にいろいろなことに挑戦しているのですね。将来はどんな看護師になりたいですか?

伊本 患者さんに対して、相手の地位やお金のあるなし、年齢、性別などにとらわれず、どんな人にも同じような目線で話ができるようになりたいです。授業の中で、看護師は“患者さんの代弁者”でもあると学びました。患者さんにとって分かりにくい部分や、医師を前にして聞きにくいことを代わりに聞く役割があるということです。どなたともフラットに意見を交わし、心身のつらさに共感して、よき代弁者となれる看護師を目指したいと思います。

―後輩たちへのメッセージをお願いします。

伊本 勉強も遊びもボランティアも何でもチャレンジして、いろいろなことを吸収していってほしいです。私は、患者さんへより良い看護を提供するためには、医療の知見だけでなくその方の興味に寄り添う力も必要だと思っています。それはスポーツかもしれないし、芸術かもしれないし、どこにヒントがあるか分かりません。だからこそ、どんな経験も役に立つと思います。

毎日を大切に、そして何事にも、“貪欲”に取り組むと良いと思います。

 

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