西村 舞 さん

旭川医科大学医学部医学科5年

2022/09/15

子どもの人生の一瞬一瞬を諦めず支える小児科医を目指して

医療系学生インタビュー(54)

学生団体の活動で幅広い子どもたちと関わる

―医師を目指そうと思ったきっかけはなんですか?

西村 明確なきっかけはないのですが、小児医療に関心を持つようになったことが理由だと思います。中学生の2、3年生のころです。

自分は健康で不自由なく育ちましたが、一方で小児期から病気や障害で命が脅かされている子どもたちがたくさんいる。闘病のためにみんなと遊べない、家族とご飯を食べられないなど、健康な子が当たり前にしていることを制限されているという子どもたちに自然と気持ちが向かうようになって、そういう子どもたちのために働きたいと思い、医師を目指し始めました。

―課外活動に力を入れていらっしゃるということですが、どのようなものがありますか?

西村 もともと小児関連の活動している団体にたくさん入りたいと考えていて、IFMSA-Japanという全国規模の医療系学生団体と、Medu-Eduという大学内の学生団体に所属しています。また、コンスタントに参加できている活動ではないですが、難病を持つ子どもと家族のためのキャンプ「そらぷちキッズキャンプ」でボランティアを行っていました。

―幅広いですね! それぞれの団体での活動について教えてください。

西村 Medu-Eduは、小中高の学校で健康についての授業を行う団体です。道内の学校にお邪魔し、対象に合わせてアプローチを変えながら授業を実施します。内容は、違法薬物について、お酒・タバコの身体への影響、性教育などさまざまです。子どもへの健康教育は、授業の後家族に話すことで情報が広がるという効果も大きいので、家でも話題にしてもらいやすいようお便りを作って渡します。コロナ禍で対面での授業が難しくなってしまいましたが、去年からオンライン授業で活動を再開しました。

授業やお便り作りを通して、医療知識を分かりやすく、楽しく伝える工夫をする経験は、医師になってから患者さんに病状や治療法を説明する際に役立つと思います。伝える情報を選び抜く必要があるので、目的と、そのための効果的な手段を意識する訓練にもなります。また、「違法薬物を絶対に使わない」、「お酒やタバコの影響を理解した上で関わり方を決める」、「性の知識を持って自分や周りの人を大切にする」といった健康教育には、将来のある子どもたちが、知識不足ゆえに傷つくことがないよう守る意味があります。

予防医学は、何科に行っても持っておくべき視点です。その一要素である健康教育、特に対象に年齢が近い大学生ならではのピアな立場からの教育が経験できる、とても貴重な活動だと感じます。

IFMSAは、さまざまな学校や地域に支部のある、とても規模の大きな団体です。

最初に興味を持ったのは、「ぬいぐるみ病院」の活動。保育園に行き、子どもたちが持っている身近なぬいぐるみでお医者さんごっこをすることで、医療を身近に感じてもらおうという取り組みです。

また、SCORPという人権と平和に関する委員会での活動にも力を入れています。病気や障害のある小児と接する機会があったこともあり、主に障害への偏見をなくすというプロジェクトに携わっていました。SCORPで、認知症への理解を広げ共に深めるためのワークショップを発案・開催したこともあります。認知症と障害は違うのですが、誤解や偏見が本人や家族を傷つけることがあったり、社会の理解やサポートが病気と共に生きる患者さんの生活に貢献できることがある。そういうところから、「障害への偏見をなくそう」というプロジェクトの中でワークショップを行いました。

「そらぷちキッズキャンプ」は、難病と闘う子どもたちに自然体験プログラムを提供するプロジェクトです。医師や看護師、栄養士の方々と一緒に、子どもたちやご家族とキャンプを行います。コロナが広がってからは参加できていませんが、普段治療を頑張っている子どもたちのご褒美になったり、その後の治療や日常を頑張る力になったり、家族と子どもたちが一緒に楽しく過ごす時間のそばにいさせていただき、少しだけそのお手伝いをしたいという気持ちで取り組んでいました。

「人生で一番の感動」の笑顔に出会った

―座右の銘はありますか?

西村 特に座右の銘はありません。以前、「死ぬこと以外かすり傷」という言葉を自分の中に持っていたこともあるのですが、医学の勉強や子どもたちとの活動などをするうち、「死ななくてもつらいことっていっぱいあるな」と思うようになって……。

最近は、言葉というよりも「置かれた場所で頑張っていく」という気持ちを持っています。中学・高校時代の学校でよく教わったことで、まず自分が今いる場所で向き合っているものに真摯に取り組む、という考え方です。

―医師としての理想像や目指すところはありますか?

西村 子どもたちの人生の一瞬一瞬でどんな経験を積み重ねられるかを、全力で考えられる医師になりたいです。

以前、嚥下機能の理由でご飯が口から食べられない子どもが、6、7歳になって初めて味のするものを口に入れた場面に立ち会いました。その時に見せてくれた、これまでの人生で一番の感動なんじゃないかというくらいの笑顔は、自分の中に大きく残っています。

小児科では、治療はもちろん発達や成長という観点が重要です。その時期に何を経験できるか、家族や同年代の友達とどんな時間を過ごすかは、その子の人生を通してすごく大事なこと。医療的な安全確保は大前提で、医師は制限を与えざるを得ない立場かもしれませんが、「かわいそうだけど仕方ない」と諦めるのではなく、どうしたら経験できるか、できないならそれに近い経験をするにはどうしたらいいかという考えを忘れずにいたいです。

―後輩たちへアドバイスをお願いします。

西村 学生時代に「自分の考えを持って、行動に移す」という経験をしてみるといいと思います。例えば私は医療系の学生活動を通して、小児医療や予防医学、障害や病気に対する偏見などについて考えてきました。まだまだ視野も狭いし、間違った考えもあると思いますが、自分で考えて行動した経験は、医師になって仕事に追われたとしても、ふと思い出して自分の在り方を考えたり行動を起こしたりするきっかけになるのではないかと思います。