日笠 壽孝 さん

国際医療福祉大学医学部医学科4年生 

2023/01/10

「ノブレス・オブリージュ」の心で社会に貢献したい

医療系学生インタビュー(56)

自然と生まれた医師という選択肢

―医師を目指したきっかけはなんですか?

日笠 父が勤務医をしていて、医師という選択肢は自然に生まれていました。今思えば、「医師になってほしい」という雰囲気はあったかもしれません(笑)。サッカー部時代にお世話になっていた整形外科の先生に憧れたところもあります。国際医療福祉大学を選択肢に入れたのは、中学1年までインターナショナルスクールに通っていた経験を活かしたいという思いがあったからです。

医師としての具体的なビジョンを持っていなかったぶん、入学してから「自分が医者になってもいいのか」と迷う時期もありましたが、そのおかげで1から自分のやりたいことを考えて進むことができました。逆に、昔から医師を目指していたけれど入ってから何をしたいか分からなくなってしまったという人もいたので、自分はある意味この順番で良かったと思います。

―学外ではどんな活動をしていますか?

日笠 一つは、ACP(American College of Physicians:米国内科学会)という会の日本支部学生委員会の委員を務めています。活動内容は、アメリカで活躍されている先生にインタビューして記事を書く、勉強会を開催する、ACPのカリフォルニア支部の学生と交流するなどさまざまです。年に1度の学会では、学生の代表1人が発表を行います。学生会員として参加できるのは基本的に1年間で、採用試験というほどではないですが、面接などが毎年あります。

二つ目は、医療系ベンチャー企業でのインターン。がん検診などのサービスを企業向けに提供している会社です。患者さんが自分のがんのリスクを知って、どのように検診を受けたら良いかアドバイスができるようなサービスのプロダクト開発のお手伝いをしています。

そして、山本雄士ゼミという医療系のゼミにも運営サイドとして参加しています。山本先生は、東大を出て循環器内科などの医師を務めた後、ハーバードでMBAを取り、その後には予防医療に関する会社を興したという特殊な経歴の方です。その山本先生が主催する、学生など医療者向けのゼミです。月に1回集まって、医療関連ビジネスの話やマネジメントについてなど、幅広いテーマでディスカッションをしています。

―座右の銘を教えてください。

日笠 最近、インターン先の上司に紹介してもらった「ノブレス・オブリージュ」という言葉です。元はフランス語で、「社会的地位がある人には、持っているものを社会に還元する義務がある」という意味があります。

自分で「社会的な地位がある」と言うのもちょっとおかしい気もしますが、父が医師であることや、家族にも恵まれています。自分が恩恵を受けている部分があるからこそ、社会に貢献する義務がある、貢献していきたいという気持ちが、この言葉で表せると思います。まだ学生なので還元できるのはだいぶ先になりますが、学ぶ中でもそういう気持ちを忘れずにいたいです。

「多様な選択肢」と「外からの視点」の発見

―進路や考え方に影響与えた人はいますか?

日笠 山本先生です。医学部で「将来」というと、臨床か研究か、どの科を選ぶのかなどといったことばかり考えてしまいますが、山本先生と出会って、それ以外にもビジネスや行政などたくさんの選択肢があると知りました。

また、医師というのは医療者ではない人から見ると特殊な仕事なので、そういう一般の視点を持ち続けたいという感覚が生まれました。内部の1人として頑張ることはもちろんですが、外からの視点を踏まえた上で医療者として何をするのかという発想が重要だと感じます。今の時点でそういう考え方を身に付けられたのは非常にありがたいです。

―将来はどんな医師になりたいですか?

日笠 今はどちらかというと内科志望ですが、いろいろと悩んでいます。というのも、専門が何かというよりも、もう少し幅広く診られるようになりたいと思い始めたからです。

細かい専門性というのはすごく価値がありますが、現在は専門家にうまく患者さんを渡す、最初の入り口になるシステムがまだ足りないと感じます。病気がハッキリ分かっている患者さんであれば専門医を選べますが、必ずしもそういう方ばかりではないと思います。何らかのかたちで、患者さんを正しい専門家につなぐ活動をしていきたいです。

また、具体的な方向性はまだ決められていないのですが、海外で活動したいという気持ちもあります。ただ永住したいということではなく、どちらかというと海外で勉強して、そこで得たものを日本に還元できたらいいなと。WHOなど世界の公的機関も選択肢として考えていますし、行政的なところにも興味があります。1週間という短い期間ではありますが、厚生労働省のインターンにも参加しました。

―医師を目指す後輩へのメッセージをお願いします。

日笠 たくさんの人と関わることを大切にしてほしいです。もちろん自分の近くの仲間を大切にするという大前提はあるけれど、医療系の学生の中でも違う大学の人と交流したり、できれば医療系以外の学生と関わったりすると、視点が変わることもあると思います。

また、例えばちょっと上の先輩だったり、社会人だったり、そういう方々とも積極的に話をしてみてほしいです。年上の方と話すと気を使うし大変なんですけど、だからといって経験や蓄積のある人と話さないのはもったいないと思います。そういった交流は自分の視野を広げてくれるはずです。インターンなどに参加するのも、そこが大きなメリットかなと。いろいろな人との関わりを楽しんで、それが成長につながったら一番だと思います。