2026
02/09
差額ベッド料のルールを知り、トラブルを回避しましょう
2002年4月に法人化したNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの専務理事兼事務局長を経て、2011年8月理事長に就任。社会保障審議会医療部会をはじめとする数多くの厚生労働省審議会・検討会の委員を務めている。2018年6月20日に『賢い患者』(岩波新書)刊行。広島大学歯学部客員教授。ラジオNIKKEI「賢い患者になろう!」パーソナリティ(毎月第4金曜17:20~17:40)。
賢い患者の知識と心構え(4)
Contents
料金設定の仕組み
差額ベッド料にさまざまなルールがあることをご存知でしょうか。差額ベッド料が設定されている病室は「特別療養環境室」と呼ばれています。一般の病室よりもプライバシーが守られ、快適に過ごすことができるので、特別料金が必要というわけです。だからといって、対象となるのは全て「個室」とは限りません。個室から4人部屋まで料金を設定していいことになっていて、一般病院の場合は、全病床の5割まで設定可能です。5割以上設定する場合は、一定の条件を満たして、厚生局の認可が必要になります。
料金設定は医療機関が独自に定めることができます。2022年のデータだと、個室の全国平均は8,322円ですが、最も高い東京都は19,770円、最も安い秋田県が3,538円と平均金額にかなりの開きがあります。中には、1日220,000円という価格設定の病室もありますので驚きます。
お部屋の料金といえば、ホテルを思い描きがちです。しかし大きく異なるのは、ホテルは1泊の価格設定なのに比して、差額ベッド料は0時起算です。つまり、ある日の22時に入院して差額ベッド料が必要な病室に入り、翌朝8時に退院したとしても、差額ベッド料は2日分になるのです(これは入院基本料なども同様です)。
差額ベッド料を支払う場合に最も理想的なのは、「私は快適な環境で入院したいので、特別療養環境室を希望します」と申し出て、広さや設備、料金を提示してもらい、病室を選び、金額が明示された同意書にサインして入院する場合です。しかし、積極的に希望していない場合にも差額ベッド料が請求されることがあるので、さまざまなルールが決められているのです。
請求の対象になるのはどんな場合か
まず、1974年から厚生省(当時)の通知が発出されていたのですが、そこには「同意書の提出がない場合」と「治療上の必要で入室した場合」は差額ベッド料を請求してはならないと明記されていました。しかし、このルールを知っていたのは病院の事務長ぐらいで、多くの医療者には周知されていませんでした。そのため、同意書がなくても、治療上の必要で入室しても差額ベッド料が請求されていました。
私たちCOMLでは、このルールを1994年に知り、電話相談や会員向けの会報誌を介して情報提供を始めました。その中で、「治療上の必要」とはどのような場合なのか、治療上の必要で同意書を提出した場合はどうなるのかなど、さまざまな疑問が生じてきました。そこで、1999~2000年にかけてある国会議員の協力を得て、政府に質問する質問主意書を提出し、閣議決定を経て出される答弁書を入手することができました。
それによって明らかになったのは、治療上の必要とは、「救急や術後でその病室でないと治療ができない場合」「(白血病で大量化学療法を受けるなどで)免疫力が低下して大部屋だと感染症にかかってしまうような場合」「心身ともに著しい苦痛を伴う終末期の状態」であるという具体例を引き出すことができました。ただ、患者が危篤状態で「家族で看取りたいから個室を」と申し出た場合は「希望した」ことになりますので、その場合は同意書を提出して請求の対象になります。つまり、誰が言い出して、どんな理由なのかがポイントになるわけです。そして、治療上の必要であれば、同意書の提出を求めることもダメだという答弁を得ました。
一方、同意書を提出していれば請求の対象になる場合も明らかになりました。それは、「ほかに空きベッドがない場合」「患者自身が感染症の場合」「ほかの患者の療養を妨げる場合」などです。この中でも最もトラブルが起きやすいのが「ほかに空きベッドがない場合」です。夜中に救急搬送されて入院が必要になり、何枚か書いた書類の中に差額ベッド料の同意書が含まれていたということが多いのです。何にサインしたのか自覚していなかったことも少なくありませんし、差額ベッド料の同意書は控えが渡されていない場合も多いので、提出したかどうかも分からないという相談も少なくありません。それだけに、書類にサインするときはしっかりと内容を読んで、「差額ベッド料の負担は避けたい」と思えば、「このような大事な同意書は私の一存で決められない」「病棟看護師長さんと相談して決めたい」などといったんは同意書の提出を保留し、翌朝、「差額ベッド料は払えないので大部屋にしてほしい」と交渉することが大事なのです。ぜひこれらのルールを理解して、差額ベッド料のトラブルを回避してください。