2025

10/02

超高齢社会となった「2025年問題」の今、私たちにできること

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(39)

1947年から1949年の戦後第1次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者に突入し、日本が超高齢社会となることで発生する「2025年問題」。雇用・医療・福祉など、さまざまな分野に影響を与えるといわれています。

介護職員の人材不足を加速させない

厚生労働省の推計によると、2025年に必要とされる介護職の人材は253万人ですが、供給見込みは215万人。38万人もの人材不足が指摘されています。国の対策として「2025年問題」における人材確保に向け、介護職員の処遇改善や人材育成、離職防止、外国人の受け入れ環境整備など、さまざまな取り組みを行っています。

国の対策以外でも、介護の現場で要介護者を支えている人材に長く従事してもらうために、私たちにもできることがあります。それは、介護が始まる前から地域包括センターと連携を取ることです。

家族だけで介護をして限界がきてしまい、急なショートステイを要請することになると、要介護者にとっても、受け入れる介護事業者側にとっても、精神的・肉体的に負担を強いることになります。  ちょっとした変化に気づいた段階で地域包括支援センターに連絡を取ることができれば、支援する側の負担を軽減するだけでなく、その人らしい生き方は何か、といったやりがいのある支援にもつながります。今以上に介護職員の人材不足を加速させないためにも、家族だけで介護を抱え込まない心構えが必要です。

「介護離職」を防ぐ

労働力不足は介護職にとどまらず、どの分野においても加速しています。なかでも、親の介護のために起こる「介護離職」は食い止めなければならない問題です。これからの日本社会の経済を全体で維持していくためにも、仕事と介護の両立は、もはや個人の問題ではありません。

「介護離職」を防ぐには、職場の理解が不可欠です。国も2025年4月1日から「改訂育児・介護休業法」を施行し、仕事と育児・介護を両立しやすくするために、柔軟な働き方ができるよう処置の拡充や、介護離職防止のための両立支援制度の強化などを盛り込みました。ただ、制度を利用するには、家族介護の状態を会社や上司に伝える必要があります。 一方で、家族介護の状況を会社や上司に伝えることは決して気軽にできることではありません。家族介護はプライベートなことと考えられがちで、職場で開示するのは高いハードルがあります。その結果、「もう仕事を休まなければどうにもならない」と切迫した状況になってから初めて伝える人も少なくありません。そのようなタイミングになってからでは、既に何らかの問題を抱え込んでおり、仕事と介護の両立が難しい状況になっているのです。

仕事と介護が両立するモデルケースをつくる

厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2024年9月データを基に作成

 

上のグラフでは75~79歳で介護認定を受けている方は11.6%ですが、85歳以上となると60.1%に急増します。団塊の世代がその年齢に達する2030年から2035年までに大量の介護離職者を出さないためには、私たちの「意識」を切り替えていかなければなりません。

今から家族介護の考え方や意識を見直し、準備をしておきましょう。社内に無理なく仕事と介護を両立できている人がいれば、「介護をしても仕事を辞めなくていい」というマインドが広がるモデルケースとなります。逆に1人でも介護離職をすると、介護に対するマイナスイメージが波及してしまいます。

早い段階から会社や上司に相談する

まだ親の介護なんて想像がつかない段階から、自分の現状を整理するために現在の親の状況や自分の仕事の状況をノートなどに書き込んでみてください。頭の中だけで考えるのではなく、文字にして書き起こすことで客観的に将来を見据えることができますし、上司に相談する際にも役立つはずです。

早い段階から会社や上司に相談しておくと、仕事と介護の両立にもつながりやすくなります。また、状況を把握してもらえている安心感も得られ、いざその時が来ても、言い出しやすさや社内制度の使いやすさにもつながります。急な仕事の調整や穴埋めは会社にとって大きな負担となるので、早いうちから「将来的にこういった状況になる可能性がある」といった情報を可能な範囲で伝えておきましょう。

仮に「もう介護のために自分が仕事を休むしかない!」と考えていたとしても、介護体制を整えた上で介護保険による介護サービスを利用すれば、仕事を休まなくて済むこともあります。仕事を休まずに介護体制の調整に徹する方が、やりすぎ介護になりにくく、親子関係を良好に保ち、親の長生きを自然と喜べるようになるのです。

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