特別企画/病院職員の安心・安全 インタビュー3

病院や職員を守るためにもカメラの設置を

防犯設備は適材適所。訓練も抑止力になる

防犯カメラや防犯センサーなどの防犯設備は、一般の住宅、また学校や病院など地域に開かれた場所でも多く使われるようになっている。しかし効果を上げるには、どんな機器をどこに設置し、どう運用するかなどの知識が必要である。公益社団法人日本防犯設備協会は、防犯設備の研究や審査、専門的な知識を持った人材の育成など、私たちの安全のために活動している団体である。本号では、当協会の理事である平野富義氏に活動内容や防犯の考え方などを伺った。

 

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 平野 富義 氏
公益社団法人 日本防犯設備協会
理事兼制度事業部会・防犯設備士委員会委員長
総合防犯設備士第02-0001号

 

安全で信頼できる防犯設備を普及させる

―公益社団法人日本防犯設備協会の活動等について教えて下さい。

平野 公益社団法人日本防犯設備協会(以下、日防設と表現)は、安全で信頼できる防犯設備を普及させ、国民の安心、安全をサポートすることを目的に、1986年に設立された団体です。この目的のためには、ハードである信頼できる防犯設備と、ソフトである「防犯設備士」が両輪となっています。日防設では、機器の調査や研究、標準・基準制定、審査・認定と、防犯設備士の育成や資格認定を中心に、教育やアドバイス、啓発活動などに取り組んでいます。

 

2016年10月現在、正会員75社、準会員150社、特別会員36団体、賛助会員7団体で構成されています。正会員は総会や委員会などの活動に参画できる法人や個人で、防犯設備等のメーカーや施工業者、警備会社が中心です。準会員は委員会活動には参画できず、防犯に関連する情報の提供を受けるのみの法人や個人です。

 

―どのような経緯で設立されたのですか。

平野 1970年頃、防犯設備を取り付けたものの、問い合わせをするとその業者と連絡が取れないなど、防犯の設備やサービスに関わる多くの苦情が警視庁に寄せられていました。そこで防犯や防犯設備について考え、またより良い機器を開発し、問題が発生してもきちんと対応できる組織が必要であるとの考えで、善良な業者によって、東京を本拠地に「防犯警報工業会」が設立されました。のちに近畿エリアにも同じような趣旨で「近畿防犯設備業協会」が設立されました。

 

東京の防犯警報工業会は警視庁、近畿防犯設備業協会は大阪府警の指導で活動していましたが、全国的な組織にするために2団体は発展的に解消し、1986年に警察庁主導で、大手電機メーカー、警備会社、施工業者が加わって全国組織として立ち上げたのが公益社団法人日本防犯設備協会です。

 

2万6千人超の防犯設備士が地域で活躍

―では防犯設備士とは、どのような資格なのですか。

平野 防犯設備士は、防犯システムの専門教育を受けて試験に合格した人材です。防犯設備は取り付ければ効果があるというものではなく、犯罪の手口を知り、効果的な機器を効果的な場所に設置するための設計や、運用管理がなされなければ信頼できる防犯システムとはなりません。日防設では警察庁の指導の下、1992年2月から養成講習と資格認定試験に取り組み当初は国家公安委員会認定事業としてスタートしましたが、その後法律の改定等があり2001年4月からは日防設の自主事業として実施しています。

 

―どのような講習や試験が行われているのですか。

平野 防犯設備士試験は毎年6月、9月、11月、2月と年4回実施しています。試験は二日間(金、土)コースで、二日目の午前中までが養成講習、午後資格認定試験が行われ、今年の2月に第97回が実施されます。現在養成講習と資格認定試験は、東京、大阪、名古屋等主な都市で実施されています。資格認定試験を受験するには、1日半の養成講習を受講した後、知識試験として「防犯の基礎」、「電気の基礎」、「防犯設備機器の構造、機能」を70分、また技能試験として「防犯設備の設計」、「防犯設備の施工、保守・維持管理」を80分行われるマークシート方式の筆記試験を受験し合格した人が防犯設備士として認定されます。

 

防犯設備士の上位資格である総合防犯設備士は、防犯設備士の指導や、防犯設備の審査や監査ができる人材です。受験するには防犯設備士として3年以上の実務実績が必要で、記述式の試験と面接に合格すると認定されます。

 

―有資格者は、現在どのくらいいるのですか。

平野 防犯設備士は2万6千人を超えたところです。大まかには、防犯設備のメーカーが3分の1、防犯設備の施工業者が3分の1、警備会社が3分の1弱、その他という比率です。警察官も受験されています。上位資格の総合防犯設備士資格者は341名です。

 

「5分以上開けられない」ことが基本

 

―防犯対策はどのように考えれば良いのでしょう。

平野 外部からの侵入を防ぐことがまず基本で、特に住宅の場合は、玄関などの出入り口や窓を守ることで90%以上を防止することができます。

 

日防設では、セキュリティーゾーン(基本警戒線)という考え方を用いて、敷地内をいくつかのエリアに分けて防犯対策を考えています。門やなどの構内部分を第一警戒線(G1)、出入口や窓、屋根、外壁など建物の外周部を第二警戒線(G2)、建物の内部を第三警戒線(G3)、金庫など守るべき対象物を第四警戒線(G4)とし、防犯診断は外側(G1)から実施し、防犯計画は内側(G4)から順に行います。

 

また侵入に5分以上かかると、泥棒の約7割はあきらめるというデータもあり、開口部を5分以上守ることが防犯対策の第一歩と言えます。

 

―具体的にはどのような方法がありますか。

平野 ピッキングという手口をお聞きになったことがあると思いますが、「防犯性能の高い建物部品」(CP部品)が増えたことにより侵入の手口も変化し、対応も変わってきました。例えば一戸建住宅の場合、現在では窓からの侵入が最も多くなっています。窓のガラスを割って、そこから内部に手を入れてクレセント(鍵)を回し戸を開けそこから侵入する手口が多いので、窓の内側上部に簡単な補助錠をもう一つ付けるなどの対策が有効です。

 

また外塀は、かつてはブロック塀やコンクリート塀が頑丈で良いとされていたのですが一旦敷地内に入られると逆に人の目に触れずにゆっくり侵入行為ができるため、最近は外から庭が見渡せるようにして犯罪企図者がいつ道路を通る人から見られるか分からないような状況をつくることが有効とされています。このように先ず5分間対策を施し、その後に警備会社に警備を依頼したり、侵入警報装置を設置すべきです。

 

―では集合住宅の場合は。

平野 マンションなど集合住宅は、最近ではエントランスがオートロックになっており、オートロックを通過する人物を防犯カメラで録画し、1週間以上保存するといった対策が一般的です。プライバシーの侵害や肖像権の問題もあるので、防犯カメラの映像は常にモニターで見ているのではなく、何か起こった時に運用規定にしたがって管理組合と警察が立ち会って録画された映像を見るという運用が行われています。マンションでも、最近は窓から侵入されるケースが増えているので、戸建住宅と同様の対策が必要です。さらに共用部に防犯カメラを設置し適切な照度の確保も必須です。

 

「気を付けている」という姿勢が抑止力

 

―医療機関の防犯についても教えてください。

平野 病院内でのトラブルとしては、「窃盗」「患者による病院職員への暴力」「患者による病院施設・設備の破壊」「患者間の暴力」「病院職員へのストーカー」等が考えられます。それぞれの場所をどのように守るかは、先ほどお話したセキュリティーゾーンの考え方に倣って対策をすべきです。

―窃盗に関しては、どのような対策が必要だと思いますか。

平野 病院内の窃盗は多岐に渡っています。例えば、入院患者さんの持ち物については、セーフティーボックスを設けている病院が多くなってきましたが、入院の際には短時間であってもセーフティーボックスを利用すべきです。

 

また、パソコン、薬品や麻酔薬、注射針、特殊な機材、危険なものが保管してある場所には、限られた人しか出入りできないように入退室制限システムの設置が有効です。さらに新生児連れ去りも大きな問題です。部屋の入り口にカードをかざすなどで入室者を制限しているところが多いと思いますが、カードは本人でなくても使用できるので出入りの際、防犯カメラで録画しておくことが重要です。退出時にもカードをかざす仕組みにすると、滞在時間も分かるのでよりベターです。

―病院は開かれた場所なので、完全に侵入者を排除することは難しいのではありませんか。

平野 そうですね。ただ怪しい人を見分けるために、すぐにできることもあります。例えば、入館時受付で必ずストラップ付きの入館証を渡し、職員、患者さん、面会者、出入業者など、それぞれストラップの色を変えておけば、見分けることができます。重要なのは、ストラップを下げていない人、立ち入れない場所にいる外部の人を見掛けたら、声を掛け入館手続きを促すことが必要です。この入館証は退館時には必ず回収することが必須です。普段から入館時チェックを厳重に実施している姿勢が抑止力になるのです。同様にマニュアルを作成しそれに従い、訓練を実施していることを知らしめることも有効です。誰でも自由に入館させることはやめるべきです。

 

―職員を犯罪から守るという視点もあると思います。

平野 特に深夜の巡回などは危険が伴います。例えば、看護師や警備員が巡回中危険を知らせるためにペンダント形押しボタンスイッチを常に首に掛けて携帯し、その場でそれを押すとナースステーションや警備室に通報するような仕組みが必要なのではないでしょうか。

 

また病室内は難しいと思いますが、出入口、廊下、エレベーターホール、駐車場などには防犯カメラを設置した方が良いでしょう。犯罪を防ぐだけでなく、何かあった時に病院や職員の潔白を証明することにもなるのです。

 

―防犯カメラはどのように選んだら良いのでしょう。

平野 薄明かり程度でも写るカメラや、真っ暗闇でも写るカメラ、逆光でも写るカメラや最近ではハイビジョンの防犯カメラも普及してきているので、適材適所でいろいろなカメラを組み合わせると良いでしょう。しかし設置場所やカメラの向きを間違うと、せっかく設置しても効果が発揮できません。設置の際は防犯設備士等に相談することをお薦めします。

―たくさんのカメラを設置するのではなく効果的な配置があるのですね。

平野 防犯カメラの設置は必要最小限度にとどめ、高画質な防犯カメラシステムを採用し、モニターテレビは常時接続せず、有事の際のみ接続し運用規定に則り画像を検証します。また録画画像は最新の1週間の画像のみ残すようにすることが肝要です。

―医療機関の防犯についてアドバイスをお願い致します。

平野 これからの病院は、患者からは安心して治療を受けられることが望まれ、一方病院としても患者の重要な情報を扱っているのでパソコンの厳重な管理が望まれます。そして関係者以外は入館・入室させないこと、さらに重要な部屋に正規に出入りした際にも防犯カメラで録画しておくことも欠かせません。

 

トラブルを発生させないためにBCP(Business continuity planning)(事業継続計画)的にもCSR(Corporatesocial responsibility) (企業の社会的責任)的にも完全を帰さなければいけないと考えます。

 

(隔月刊ドクターズプラザ2017年1月号掲載記事)

2017.9月号
リスト
  • 1. 巻頭インタビュー
  • 2. ドクターヘリ
  • 3. よしこ先生のメンタルヘルス
  • 4. 海外で活躍する医師たち
  • 5. 健康インタビュー
  • 6. 健康サポーターえむぞぅくん
  • 7. 医療系学生インタビュー
  • 8. 地域医療・北海道
  • 9. 小黒先生の薬の話 Q&A
  • 10. 微生物・感染症講座
  • 11. 川柳漫語
  • 12. 女子大生が考えた一品料理レシピ
  • 13. 魅地探索
  • 14. 僻地・離島医療
  • 15. 読者プレゼント
  • 16.医療法
  • 17.病理診断科の紹介
  • 18.野菜考
  • 19.一期一会・この人に聞きたい!
リスト
  • 1. 西松 能子
  • 2. 横山 和之
  • 3. 天願 勇
  • 4. 小黒 佳代子
  • 5. 内藤 博敬
  • 6. 江畑 哲男
  • 7. 東京家政大学ヒューマンライフ支援センター
  • 8.竹内 千佳
  • 9.末松 直美